僕の運命の乙女は

「でも王太后様が私を選んだのは……」


マグダレーナ王太后様はフェリス様の幸せを望んで、レティシアを花嫁に定めた訳じゃない。


むしろレティシアはフェリス様の足枷として選ばれた姫だ。


「マグダレーナ様がレティシア姫を選ばれたのは、御二人の運命を御存じだった訳ではないと想いますが、フェリス様にとってもディアナにとっても幸いでした」


セフォラの言葉はとても優しいし、金色のドラゴンさんには乗せてもらったけど、竜を従える姫は盛り過ぎだと想うの。金色のドラゴンさん泣いてた子供をあやしてくれただけなの。優しいの。


「それではまるで、私がフェリス様の運命の乙女のように……?」


レティシアは小首を傾げた。さらさらと長い金髪が滑り落ちる。

なんだか日々、レティシアの髪が艶々していく。


フェリス様の竜気効果なの? 

サキやリタやハンナの功績? ディアナの気候?


「聞いておくれ、セフォラ。レティシアが僕の運命の人だよ、て言っても、ちっとも信じてくれないんだ、うちのちいさいお姫様は」


「だって、フェリス様……」


そーいうのは後から真打ちとかでてきそうじゃないですか? 


レティシアもこの世界では一応、お姫様生まれなのですが、中身はモブ系の和風庶民ですし、我が輝ける推しフェリス様とはあまりに格が違うと言うか……。


「王弟殿下がレティシア姫の御心を得ようとこれから努力されたら、ディアナの令嬢方も喜ばれるのでは? それが恋というものですよ、と」


「セフォラに恋を語られてもな。僕とセフォラの恋の知識じゃ五十歩百歩だろう」


「御意……」


妖精さんのように美しいセフォラさんとフェリス様が二人が何だか仲良し!


「御二人は仲良しなのですか?」


「学友だよ。友達の少ない僕の貴重な友だね」


フェリス様が鈍いだけでお友達になりたい人はたくさんいらっしゃりそう……。


「もったいないことです。……レティシア様、私は魔法学院の劣等生で……」


「え? そんな風にはとても……」


セフォラは笑うと、ちょっと幼くなった。


「セフォラは力の制御がうまくいってなくて、ひどく憔悴してたのですが、フェリス様とは大きすぎる魔力のコントロールが追いつかない同士、反省室で逢って気が合ったようで」


マーロウ先生が説明して下さる。


「フェリス様が反省室ー!」


「意外? レティシア」


びっくりしてレティシアがフェリスを見上げると、フェリスはばつが悪そうだ。


「はい。フェリス様、悪いことなさりそうにないので……」


「………、」


「………、」


「………、」


「セフォラ、レイ、妙な顔しないように。レティシアが僕を不審がる」


なんで、みんな、変な顔? マーロウ先生まで? もしかして意外にやんちゃだったの、フェリス様?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る