魔法省のお客人
「レティシア姫」
「マーロウ先生!」
マーロウ先生の柔和な御顔を拝見すると、レティシアは駆け寄りたいような気持になった。
「お元気そうで何よりじゃ、姫」
「マーロウ先生、このたびは、私が災いの姫と占われ、魔法省や神殿に御迷惑をおかけしたと……」
フェリス様が、魔法省と神殿がレティシアのことでサリア側に抗議いれてくれてる、て仰ってた。
来たばかりのサリアの姫の為に、サリア王室に抗議なんて、有難いやら申し訳ないやら……。
「おや。愛らしい姫のお耳にまで聞こえぬうちに奇怪な話は白紙にするつもりでしたのに、御耳に届いてしまったようで、こちらこそ面目ないですぞ。……この婚姻は双方にとって吉祥、と占った我らの見立てに信はおけぬとサリアから言われ、まことに驚き悲しんでおりました。……のう、セフォラ」
「セフォラ、久しいな」
「フェリス殿下、お久しゅうございます。レティシア殿下、初めてお目にかかります、夢見のセフォラと申します。シュヴァリエの薔薇がよくお似合いです」
銀髪に銀の瞳、白いローブを纏った青年が膝をついて、ハンナがレティシアの髪に飾ってくれたピンクの薔薇を褒めてくれる。
とっても独特の雰囲気のある、綺麗な人……。何となく、フェリス様と何処か似てる……?
「レティシアは真実でない占いに傷ついていたから、セフォラに逢わせたくて。マーロウ先生がおいでになるというのでセフォラの同行をお願いしたんだ」
「わたし……?」
「さよう。レティシア姫はフェリス殿下に幸いをもたらす、と占ったのは、ディアナ一の夢見のセフォラですゆえ」
「わたしが……?」
王太后様に、フェリス様を封じるために選ばれたようなレティシアが?
フェリス様に幸せを運べるだろうか?
不吉な、災いの姫といわれたレティシアが?
「はい。サリアの占い師ミゲル殿はイザベラ王妃の手を離れ、フェリス様の預かりとなるそうですが……」
「え。フェリス様、そうなのですか? ミゲルがフェリス様の預かりって……」
それ、レティシア、聞いてなかった。
「レティシアの叔父様と叔母様を疑うのもなんだが、何もかも彼だけの責任にされて、そっと亡き者にされてもいけないし。……レティシアへの策略の証人になってもらわないとだしね」
そうなのか。うーんミゲルの気持ちはわかんないけど、叔母様預かりよりフェリス様預かりの方が、レティシア的にはお勧めできるけど……。
「レティシア姫。正しく未来を見るべき者の過ちをお許しください。ディアナは竜王陛下の数々の御言葉のおかげで、魔法を生業とする者も守られている国ですが、すべての国がそうな訳ではないので、……残念ながら、権力を持つ方におもねることになってしまう同業者もおります。ですが、夢見というのは、決して、決して、人を傷つける為の才であってはならず……、ほかの者に見えないものを語ることで、少しでも、人々を護る力でありたいと……」
「もちろんです。 どうかセフォラ様が謝らないでください。御言葉通り、サリアではディアナほどは魔法の力が強くないので……」
セフォラとミゲルはぜんぜん関りのない人だけど、セフォラとしては夢見の力が悪しき使い方をされたことが哀しくて申し訳ないみたい。
夢見という自分の仕事に誇りを持ってらっしゃるんだろうな……。
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