愛しの姫君の初めての我儘について

「そうなのか? 女人の心に詳しくないのは僕もレイも変わらぬのではないか?」


わ、笑っちゃダメだけど、頬っぺたがひくひくしちゃう……。


フェリス様、大真面目に言ってるみたいだから。


「私はフェリス様のおかげで、令嬢方の水面下の努力や諍いに詳しくなっておりますので。いいのですよ、我が主はちょっと鈍いぐらいがお可愛らしうございます」


「レティシア? レイがなんだか僕にひどいと思わないかい?」


「……でもフェリス様はたしかに……」


フェリス様はねー、なんか凄い天然だからねー。


物凄い美貌の持ち主なんだけど、僕の貌が怖いから怖がらせてしまったのだろうか? て真剣に心配する人だよ……。女心とフェリス様はだいぶ遠いところに位置してるよ。


「僕のレティシア。レイの味方しないで」


「きゃあ、フェリス様!」


抱き上げられてしまい、レティシアは慌てる。


最近、抱っこ癖が! ついてる気がするの、フェリス様ー!


わたし、猫の仔じゃないのにー!


「ねぇ、レティシア、姫君の心に疎い僕に教えて」


「は、はい?」


御令嬢方の心にはさっぱり疎いフェリス様だけど、御令嬢好みの顔なのは間違いない。


「僕の為に無理して大きくなりたいの?」


「ち、違います! 私が、フェリス様とちょうどよい背丈でダンスとかしたいのです!」


嘘じゃないもん。それも本当だもん。


私だって、政略結婚でも、かりそめでも、人生二度あわせて、初めての結婚式だもん。


せっかくなら、ベストポジションで、フェリス様の婚礼礼装をこの眼で拝みたいじゃない!


(何かが違う……)


ディアナの礼装どんななんだろう。フェリス様何着ても似合うと思うけど……。


「本当に?」


「本当です!  でも急に私が我儘申し上げて、皆様に迷惑かけるようなら望みません!」


レティシアはぼんやりしてるあいだに、婚礼のこと進んでたけど、きっとディアナの人もシュヴァリエの人も、みんなずっとフェリス様のお祝の為に準備してきてると想うから、突然変更したら、迷惑かけるかもだし……。


「いや、魔法の国ディアナとしては通常通りではなく皆を驚かせるのは喜ばれるだろうし、滅多にお願いをしたこともない僕が陛下にお願いしたら兄上はきっとお許し下さるだろう。僕とレティシアの式なんだから、誰よりもレティシアの望むようにしてあげたいよ。でも本当に、僕に変な気を使ってない?」


「使ってません。嘘ついてないです」


こつん、とフェリス様の額に額をあててみた。


バレないように、フェリス様と、にらめっこ!


だって、私だってそれなりの背丈で結婚式を楽しめたらなー、も本当だもん! 嘘じゃない!


(フェリス様に恥かかせたくないとか、それは内緒!)

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