姫君からのお願い

「竜王陛下ー!」


こっちの廻廊歩いたことなかったーと想いながら、フェリス様と手を繋いで歩いてたら、竜王陛下の大きなタペストリー発見ー! わーい、竜王陛下ー!


「シュヴァリエのおうちにもいらしたのですね、おっきい竜王陛下!」


「うん。こっち通ってなかった、レティシア?」


「はい、初めてです!」


嬉しい! 竜王陛下! やっぱり、おっきな竜王陛下の絵あると、ディアナのおうちーて気がするのー。


凄い落ち着くー。シュヴァリエのおうちの廻廊の竜王陛下は、薔薇の茂みで片膝立てて座ってらっしゃる。薔薇の里らしいね!


ああースマホあったら、きっと竜王陛下と写真撮っちゃうー。


「僕とレティシアの絵も、上手な画家に描いてもらわなきゃね」


「私、残念なモデルですが……」


でも昨日見せて貰ったサリアの号外の中のレティシアは、フェリス様とサイファと一緒でとっても幸せそうだった。あんな絵ならレティシアも欲しいな~。


「レティシアは残念なモデルではないから、画家の腕が残念だったんだよ」


「いえ。あの。私、じっとしてるのも表情を作るのも得意ではないので」


「ああ。そうだね。レティシアは僕と違って、よく動く表情が可愛らしい。それをよく描きとれる画家がいいね」


「……、……」


いつもながらの、フェリス様のレティシア大甘採点……。


どう思いますか、竜王陛下、と竜王陛下を見たら、薔薇に囲まれた竜王陛下は御機嫌そうだった。


そうね。きっと楽しいかも。フェリス様と一緒なら。昔、お父様やお母様と一緒に絵を描いてもらったときみたいに……。


「フェリス様、私、お願いがあるのですが」


「何だい?」


「あの私達の結婚式の時」


本当に、結婚するのかなーと不思議に思う。


「うん?」


「私を魔法で大きくしてもらえませんか? フェリス様の隣にいておかしくない位に……」


「レティシアはいつも僕の隣にいておかしくないよ?」


「……あの。でも。私……フェリス様とダンスとかしてちょうどいい背丈がいいなって……結婚式、一生に一回だけだし……」


居並ぶ外国の招待客に、フェリス様が子供の嫁を迎えたとか、とやかく言われるのが嫌なの。


「もちろん竜王陛下の前で誓うときは、このままの姿で……披露の宴などの折にはもうちょっとおっきくなれないかなって……無理ですか?」


母様の首飾りを取り返してくれたフェリス様。


母様の庭の薔薇を蘇らせてくれた私の優しい婚約者様。


私もフェリス様をお守りしたいの。


「いや。レティシアがそうしたいなら、もちろんかなえるよ」


「ホントですか? やったー!」


私が万歳したら、後ろに控えてたレイがびっくりしてた。


「姫君にとって婚儀というのはとても大切な儀式ですしね」


「レイなのに女心でもわかってるようなことを言う」


「フェリス様よりは私のほうが女性の心を解すのではないかと思われます、我が主よ」

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