主人と一緒で仲良し

「フェリス様」


「サイファの様子を見に来たの?」


「はい。まだこちらに慣れてないから、ちゃんと眠れてる? と思って……」


心配してたけど、サイファなんだかツヤツヤしてるっ。よかったっ


フェリス様に竜気分けてもらったのかな?(でも馬と竜気ってどうなんだろう~)


シルクが気にかけてくれるからかな?


「おはよう、サイファ、具合は?」


「ヒヒン」


フェリス様が触れると、サイファは大人しくちょっと緊張した様子で身を任せている。まるでディアナ王宮でフェリス様とお仕事してた騎士の人たちみたい。


「うん。体調は良さそうだ。シルク、ここに慣れていないサイファのことを頼むね」


「ヒヒーン」


お任せを、と言うようにシルクが頷く。シルクとサイファはちょっと似てるっていうか……、シルクもフェリス様の愛馬であることに激しく誇りを感じている子なので、レティシアと離れて病気になっていたサイファの気持ちもよくわかるのかも知れない。


馬の性格に寄るんだけど、誰とでもうまくあわせてくれる博愛な子もいれば、この人と決めた主人だけ、て頑固な子もいるので。


「レティシア。泣いていたの?」


「あの、あの、サイファとシルクに、フェリスさまのおかけで、レティシアもう災いの姫じゃないんだよーて話してたら嬉しくて……」


「レティシアは一度も災いの姫だったことはないよ。ね、サイファ、シルク」


「ヒヒーン」


「ヒヒーン」


当然! とサイファとシルクが共鳴してる。え、こんな陽気なサイファ、初めて見たかも。


「……サイファ、ディアナきて、お友達できてよかったね」


「シルクは難しい子だからサイファが仲良くしてくれると僕も助かる」


「ヒヒン」


御主人……、と言いたげなシルクを、サイファがそうなの? と不思議がっている。


「サリアの魔法省と占星術ギルドにも僕から一言入れないと」


「? 何をでしょう?」


「サリアにおける長期に渡る、我が姫への不当な名誉棄損に対して、魔法省もギルドも機能してなかったことだよ。それはあのミゲル一人の罪じゃない。ミゲルの占いはおかしいだろうと訴える者がいなかったのが問題だ」


「……フェリス様のお立場に障りありませんか?」


「障らないよ? サリアの魔法に携わる方々の賢明なる見識を持ってして、何故かような錯誤を誰一人として指摘しなかったのか、私としては非常に理解に苦しむ、と、疑問を呈しておくよ」 


「訳すと、ちゃんと仕事しろ、この名ばかりの役立たずどもめ、というところですかね」


「レーイ。レティシアによくない言葉を聞かせない」


「失礼いたしました、フェリス様。レティシア様、憂いが晴れて、輝くようにお可愛らしいです」


「ううん、レイ、可愛くないのー、わたし、うれし泣きしちゃって、せっかくのハンナの努力が……」


わーん、レイまで来ちゃった。泣いた後の顔、ぐしゃぐしゃ。恥ずかしいー。


「ああ、僕の大切な姫君の泣き顔を余人に見せるものではないね」


ふわっとフェリス様の指先がレティシアに触れると、涙がしゅうっと消えて、ちょっとべしょべしょしてたレティシアの白い頬が綺麗になった。


フェリス様の指、多機能……レティシアの歳だとまだ全然お肌ぴかぴかだからいらないけど、おっきくなったら、美容魔法とかやってほしいかもー。


「最初に逢ったときに、サイファといろんなこと話したいって言ってたのが叶ったね、レティシア」


「はい!」


レティシアは元気よく頷いた。サイファに昨日あったことを話せるのも嬉しかったけど、レティシアの言葉をフェリスが覚えててくれたことも嬉しかった。


フェリスと手を繋いで厩舎を後にしながら、大人にしてるんだよー、とレティシアはサイファに手を振った。

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