異界の魂を持つ、僕の花嫁
(中身は、フェリスよりレティシアのほうが年上なんだろう?)
とレーヴェが揶揄ってた。
レティシアは前世の記憶があると言ったけど、恋人とか夫はいたのだろうか……。
それは気になるけど聞きたくないな……。
運命の恋など信じない、と僕の姫は言ったから、生まれ変わっても逢いたいほどの相手はいなかったのだろうか……それなら嬉しいのだけど。
「フェリス様? サリアで何か気になることが?」
「いや。イザベラ王妃は確かに考え違いをしてるな、と。変わり者の僕の相手なぞ、レティシア以外の姫なら早々に嫌になって逃げ出したろう」
「それはどうでしょう。フェリス様が気に入るかどうかはともかく、フェリス様がそこにいらっしゃるだけで幸せな姫はたくさんいらっしゃいますよ。私はいつもレイが冷たいからフェリス様に近づけないのだ、と不当な恨みを頂いております」
「いるだけで? 置物として? まあ確かにレーヴェの動く絵のようで……」
「違いますよ。フェリス様として魅力的なんです」
「……レイがレティシアみたいなことを言う」
「はい。レティシア様が、フェリス様はどうもそこのところを誤解してらっしゃるわ、竜王陛下は素晴らしいけど、フェリス様はフェリス様として魅力的なの。そこを、私達は、フェリス様推し同盟としてお伝えしなければいけないわ、レイ! と」
「いつのまにそんな同盟結んだんだ」
ちいさいレティシアは、いつのまにか、フェリスの知らないところで動き回って、親交を深めている。
偉大である。
「フェリス様、推し同盟でございます。私のような不調法者には、ところどころわからない単語がございますが、レティシア様の愛と熱意は伝わっております」
「羨ましいことだな。僕もレティシアと同盟したい。……そう、アドリアナというあの姫が、レティシアが僕を盗ったとひどく錯乱していた。僕の方がレティシアを気に入っているのに、奇妙な事を……」
「そういう姫はフェリス様が意識されてないだけで、星の数ほどいらっしゃいますよ。……ですが、レティシア様の従妹姫となるとちと面倒……いえ、御親族ですから、御無礼のない程度に、いつものように冷たくされるがよろしいかと……」
「レイ、いつも僕が冷たい人間に聞こえる」
「これは失礼いたしました。いつものフェリス様のように、他の方とおなじように接されるとよいと思いますよ」
にこり、と鏡の中のレイが微笑む。
絶対に、サリアに連れてかなかったのを根に持っているな。
でもべつに誰にも冷たくしている訳ではない。
フェリスは、皆に等しく失礼のない程度に接しているつもりだ。
ただ、人間の娘は、誰も彼もひどく遠く想える。
(フェリス様! そこはフェリス様がお気になさらなくていいのです! レティシアはそっとフェリス様を推させて頂きたいのです)
(私とランス先生は、フェリス様はもっと我儘になるべきだと結論に達しました!)
あの、不思議な、異界の魂を持つ姫君以外は。
「サリア王宮を少し壊して騒がせて申し訳なかったから、サリア神殿にも寄進しよう。ああ、ネイサン王達の悪事の証人として、レティシアに悪い占いをしていたミゲルという者をこちらで抱える手続きを頼む。いろいろとサリア宮廷のことも聞けると想う」
「御意」
王宮自体はあの困った人達に修繕して貰うとして、少し騒がしたお詫びをしておかないと、レーヴェの子孫は無礼だと御機嫌を損ねてもいけない、と、サリアの女神からレティシアを預ける者として見込まれてるとも知らぬフェリスは鏡の前で考えていた。
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