もう少しこのままでいたいと想う気持ち

「フェリス様、お目覚めですか? レティシア様がお部屋にいらっしゃらない! とハンナが狼狽えておりますが、レティシア様はこちらにいらっしゃいますか?」


レイの声だー。


「あ、私、自分のお部屋からいなくなっちゃったから……」


どうやって移動したのかはレティシアにはよくわからない。


レティシアのお部屋で、金色のドラゴンと空を翔る夢を見ていたと想ったら、フェリス様の腕の中にいたので。


「ああ、レティシアはここにいる。すまない。連絡を失念していた」


フェリス様がドア越しにレイに言葉をかける。


起きなきゃなのー。


でももうちょっとこのままでいたかったかも。


サリアと違って、みんなとってもよくしてくれるんだけど、ここから出たら、フェリス様と二人ではなくなるので。


それはもう生まれた時から、レティシアにしてもフェリス様にしても、周りに多くの人がいてという暮らしなのだけれど。


「御二人とも、お目覚めになりますか? いま少しお時間おいてからのほうがよろしいですか?」


「こののままもう少しレティシアといたかったな」


ぽつりとフェリス様がちいさな声で言う。


「あ……」


フェリス様、レティシアとおんなじこと想ってる! すごい! とレティシアはびっくりして、口に両手をあてる。


「どうしたの? レティシア、何か驚くことが……?」


「いま。私も、もう少しフェリス様とこのままがよかったなーて想ってたので」


嬉しい! 仲良し! 考えることまでおんなじなんて!


「じゃあ、レイにもう少し後で来て貰う?」


悪戯っぽくフェリス様の碧い瞳が輝く。可愛い。

フェリス様可愛いんだよ、ホントに。


何故かあまり同意を得られないんだけど……。


「あ、いえ、起きます。急にベッドからかき消えてて、きっと心配かけちゃったと想うので……」


「僕のレティシアは、やっぱり僕のレティシアだ」


………? フェリス様の日本語が変? いえ日本語ではないんだけど。


レティシアを離すのが寂しいな、と額と額をあわせて、耳元で囁かれた。


う? 


ううう? 


フェリス様のアップと囁き声の破壊力が………。


「僕とレティシアはとてもよく似ているよ」


起きたくないけど、みんなの為にもそろそろ起きなくちゃね、と想っちゃうとこ?


フェリス様も、竜王陛下そっくりの我儘そうな美貌で、中身は生真面目な方だものね……。


「フェリス様?」


「ああ、無粋なレイ、入っていいよ」


「フェリス様。朝から人を勝手に無粋な随身にしないで下さい。お声を聴いて、もう少し後に参りますか? てちゃんとお尋ねしましたでしょう?」


ドアが開いて、一日が始まる。


笑いを含んだフェリス様の許可の声に、ぼやきながらレイが部屋に入って来た。




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