目覚める、竜王陛下の愛しい娘

「……ん……にゃ……くまちゃん……?」


いつもぎゅっとしてるくまちゃんのもふもふが指先に感じられない。


……なんで?


わたし、くまちゃんベッドから落っことしちゃった?


焦って、ぱちっと瞳を開くと、豪奢な金髪が眼に入った。


「フェリス様、髪、綺麗ー」


レティシアの隣にはくまちゃんではなく、フェリス様が眠っていた。


くまちゃんも可愛いけど、フェリス様も可愛い!


可愛いというか、お美しいけど……でも可愛いのー!


「昨日あのまま帰って来て二人で寝ちゃったのかしら……? じゃあ、くまちゃんは落っこちたんじゃなくて、私のお部屋かな?」


フェリス様には、実家のことで迷惑をかけたことと、神殿と居酒屋さんに連れてってもらったことと、いっぱいいっぱい御礼いわなくちゃ……。


「あ! ああー!」


あの! フェリス様とレティシアとサイファの号外! 欲しかった!


だってフェリス様素敵だったし、サイファ可愛かったし!


神殿か居酒屋でお願いすればよかった……!


推し活初心者として大失敗……!


「どうしたの? レティシア? ごめんね、夜、くまちゃん持ってきとくべきだった?」


「あ、いえ、くまちゃんではなくて、号外が……フェリス様の号外が……」


「僕の号外? 僕また何か悪いことしたっけ?」


うん? とフェリス様は不思議がっている。


「昨夜、神殿と居酒屋さんに貼ってあった号外が欲しくて……」


「ああ。レティシアが可愛かったね」


「フェリス様がかっこよくて、サイファが可愛くて!」


「サイファもよく描けていた。そうか。じゃあ取り寄せよう。居酒屋にもたくさん貼ってあったし……」


「本当に? フェリス様、大好きです!」


いつも輝いてるけど、もう天使の輪が見えるフェリス様!


「僕もだよ。……あれのおかげで、僕は怪しいディアナの変人王弟から、レティシアに少しはふさわしい婚約者として身分が上昇してるようだから、僕は号外を作ってくれた人に御礼を言うべきかもしれない」


「いえ。勝手に記事にされてるんですから、フェリス様が御礼を言うのも変なような……? でも、礼拝堂で拝見したり、居酒屋でお話しできたサリアの方がフェリス様を大好きになって下さってて、とっても、とっても嬉しかったです……!」


あのサリアの居酒屋はフェリス様同担の聖地とするわ!


「うん。よかった。嫌なことがあったから、良い方々にレティシアの婚姻を祝って頂けて。サリア王宮に送っても何かと滞りがちなようだし、あの酒場に、街の方に配布して貰えるような祝いの品を送ろうかな……」


「フェリス様。いろいろご迷惑おかけして」


「レティシアが謝ることじゃない。迷惑なら僕もたくさんかけてるよ、レティシアに」


国が違うけど、起きて三つ指ついて謝ろうかしら、と想ったら、あれ、なんでか、グラス握りしめてる、私……。


え、もしや、このグラス、居酒屋さんから持って来ちゃったのかしら……?

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