夢見る、竜王陛下の愛しい娘
長い夢を見てた。
金色のドラゴンさんと空を飛んでたと想ったら、フェリス様の腕の中にいた。
フェリス様の腕の中だったけど、そこはサリアでイザベラ叔母様が目の前にいた。
イザベラ叔母様は今も怖い。
迫力なら、断然、ディアナのマグダレーナ王太后様のほうが怖いけど、イザベラ叔母様には地味にずっと苛められたので……。
何が悲しいって、私が、叔母様や叔父様とうまくいってないと知ったら、きっと天国にいらっしゃるお父様やお母様が悲しいだろうと……。
だから、なんとかうまくやりたかったんだけど、全然、努力は実らなかった。
努力はいつか必ず叶う、なんて、嘘ばっかりじゃないって、レティシアはサリアのひとりぽっちのベッドでいっぱい泣いた。
そのうち無駄な期待をするのを諦めた。
いろんなことを諦めて、うつろな眼をして暮らしてたら、フェリス様との縁談が来た。
レティシアに拒否権はなかったけど、少なくとも、このサリア王宮を出られるんだ、と想った。
そして、サリアの役に立てる。
何の希望もないレティシアの結婚で、サリアの名も知らぬ誰かの幸せを護れたらいいと想ってた。
レティシアのような小さな娘が、親を失う事のないように、ディアナの豊かさの恩恵をサリアが受けられれば、と。
世界で一番美しいと想っていた宮殿は、両親を失って世界で一番悲しい宮殿になってしまったから、遠いディアナに行くことも、さほど苦痛ではなかった。
むしろ、誰も知らない、何処か遠くへ行きたかった。
(僕の姫君、僕の大切なレティシア)
そんなことを言ってくれる夢の王子様に逢える期待なんて欠片もしてなかった。
ごく現実的に、ディアナ宮殿は広いだろうから、何処か端っこにおいて頂ければ、と想っていた。
(どうして、僕より詐欺師の言うことを信じるの? レティシア、僕はレティシアの魔法使いなんだから)
レティシアの婚約者。レティシアの魔法使い。神話の竜神レーヴェ様にそっくりのフェリス様。
(僕はレティシアがいい、レティシアじゃなきゃダメだ、他の姫ならいらない)
フェリス様はきっと、ちいさなレティシアに同情してるの。
レティシアが実家で大事にされてなかったことがバレてるから。
そもそも縁談を受けて下さったのも、昔のフェリス様に似て、幼くして親を亡くしたレティシアに同情したからで……。
レティシア、自惚れすぎちゃダメ。
でも最近、レティシア、悪女だから、ちょっと甘えちゃうかも。
あんまりフェリス様が優しくしてくれるから、だんだん我儘になってるの。
「どうしてレティシアばかり! どんな悪い魔法でフェリス様の心を盗ったの!」
従姉妹のアドリアナに怒られたけど、レティシアにそんな悪い魔法なんか使える訳ない。
まだ初歩の水の魔法だってちっとも……。
マーロウ先生、逢いたいなあ。
魔法のお勉強習って、マーロウ先生とたくさんフェリス様のお話したい。
魔法の家に行ったからかな、レティシアも先生に逢いたくなっちゃった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます