サリアの災いを呼ぶ姫 62
「レティシア。呪いの姫も、災いの姫も、最初からすべてが嘘だと納得した?」
「フェリス様……」
ミゲルの占いには不信を持っていたけれど、まさか叔父様の意図だったとは……。
でも何よりも、セファイドのじぃが叔父様の手の者に殺されたのではなかったのだと聞けて嬉しい。
周囲の誰からも疎まれる暮らしも辛かったけど、優しいセファイドをレティシアの為に死なせたのでは、との疑念が消えなくて苦しかった。
だからいっそ誰からも遠ざかりたかった。
レティシアの為に死ぬ人を見たくなかったから。
サリアを出て、フェリス様に逢って初めて、フェリス様は竜王陛下の血を引いてて魔法も使えて、凄く強そうだから、きっとレティシアといても死んだりしないて想えた。
「たくさんたくさん感謝してます、フェリス様。サリアの為に、心あるウォルフのじぃたちが本当に復権できるといいのですが……」
あまり深く考えることが好きじゃない叔父様と、それに頷く貴族ばかりの宮廷では、少しもよくならない気がするから。
「それは心にかけよう。ネイサン陛下が僕達との約束を破らぬようにね」
「……叔父様、ちょっとフェリス様を怖がり過ぎじゃありませんでした?」
レティシアはフェリスへの感謝の気持ちでいっぱいだが、叔父上にはちょっと不機嫌である。
「僕、怖い貌だから」
「怖くありません! いくら嫌いな私の婚約者だからって、あんなお化けでも見るみたいに、フェリス様に無礼です……!」
ぷんすか。
小さな子のように(小さな子なのだが)フェリスに抱かれて、サリア王都の夜空を横切りながらレティシアは怒っていた。
竜の飛翔には到底及ばないけど、僕とサリア王都を上空から見てみる? とフェリス様が誘ってくれたのだ。
フェリス様の言葉通り、豪雨は王宮に集中的に降っているようだ。
「とても聡い僕のお姫様が、妙なとこ鈍くて僕は嬉しい」
フェリス様はなんだかとっても楽しそうに笑っている。
……笑うとこじゃなくない?
叔父様、凄い顔でフェリス様見てたんだよ!
もーくやしい!
私の推しのフェリス様まで化け物扱いするなんて、私の不気味姫扱いよりよっほど腹立つ!
ディアナのフェリス様ファンクラブと、レーヴェ様ファンクラブに泣きつきたい。
うちの叔父が麗しの殿下に超絶失礼なんですって(常に失礼だけど叔父様は……)。
「レティシアが特別優しい姫なだけで、僕なんて普段から化け物みたいな男じゃない? 普通の人は空も飛ばないだろうし」
レティシアは怒ってるけど、フェリス様は怒ってなくてとても楽しそう。
「私の推しのフェリス様は常に美しくて、常に可愛いです! 化け物ではありません! 魔法がお上手なだけです!」
「人生初、人の子に可愛い扱いされた……、レティシア、腕振り回して暴れると、落ちるから」
むかむかむかっ。
叔父様も相変わらずだし、アレクの嫁とか何があろうとサリアに帰りたくないこと言われるし、アドリアナにはフェリス様盗ったって睨まれるし(盗ってないしっフェリス様は意地悪姫にはあげないっ)。久しぶりのサリア王宮、地雷だらけなのっ。
「ああ、ちょっとサリア王都に降りてみよう」
「何処にですか?」
フェリス様が寄りたいとこあるのかな?
生まれて育ったサリアの街も、レティシアはそんなに歩いたことがないから興味深いけど。
レーヴェ様の泣いてる神殿に向かうなら、竜王陛下の涙を拭いてあげなきゃ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます