第346話 サリアの災いを呼ぶ姫 43

めそめそ泣いてばかりじゃダメだー!


フェリスに寝かしつけてもらった優しい夢の中で、レティシアは一人、決意を新たにしていた。


起きたら、レティシアも叔母様に手紙を……、ううん、フェリス様にお願いして、

サイファを迎えに行ったみたいに、転移の魔法でサリアに連れて行ってもらう?


そして、ちゃんと言うの。


私、アドリアナとは交替しませんって。


私もフェリス様もアドリアナも、交換可能な品物じゃありませんって。


レティシアは、フェリス様といたい。


(強欲なレティシア! 子供の癖に、何故、レティシアは何もかもを欲しがるの!)


てまた言われちゃうかもだけど……。


強欲でもいいもん。


負けないもん。


サリアにいた頃から苦手な叔母様の占い師より、大好きなフェリス様の言葉を信じるんだもん。


(僕のレティシアは呪われたりしてない。三流の占い師の言葉は何も気にしなくていい)


この世界に生まれてから二番目のお願い。


父様と母様を連れていかないで、て一番目のお願いは叶わなかった。


フェリス様といたい。


この二番目のお願いは、フェリス様の為にも引かない。


だって、アドリアナ、凄く意地悪なんだもん。


レティシアはフェリス様の婚約者として、大切な大切な友として、推しのフェリス様をお任せするなら、ちゃんとしたフェリス様の運命の御相手にお任せしたい。


うちの叔母鬼推しの意地悪アドリアナとか、ダメ、絶対。


一番最初に逢った時に、僕が必ずあなたを守るから、と言って下さったフェリス様。


レティシアもそのとき決めた。


こんな子供の花嫁を押し付けられたのに、嫌な顔一つしないで優しくしてくださる、

お人好しのこの王子様をきっとお守りするって。


強欲で呪われたレティシアが、必ずフェリス様をお守りする!


父様と母様が旅立たれてから、なんだか禍々しいうちの親族を、フェリス様に関わらせない!


(だってフェリス様、お義母様だけでも大変だし)


「……泣いてるの?」


「ドラゴン……!」


金色の子供のドラゴン!


前にお背中に乗せて貰って、お城に連れて帰って貰った。


「どうして、泣いてるの? 誰かに苛められた?」


「あのね、レティシアが呪われてるから、フェリス様やディアナに災いなすよ、て言われて……」


「呪われてないよ、レティシア」


即答!


「ほんとう? フェリス様もそう言ったけど、大丈夫かな? 私ね、頑張って、呪われてないって、ディアナにいたいって、サリアの叔母様に言おうと思って……」


「うん。そうだね。そんな嘘で泣かなくていい」


フェリス様みたいなこと言うドラゴン。


「きゃ」


「あげる。花冠。こんどあったら、あげようと思ってた」


「綺麗! ありがとう」


頭に、花で編んだ冠を乗せて貰う。ドラゴンどうやって花冠作ったのかな。


ドラゴンのお手て、可愛いけど、この手で作るの大変そうだけど……。


「レティシア、花冠、似合う。可愛い」


「嬉しい」


「帰っちゃダメだよ。ここにいてね」


「うん。ここにいたいの。フェリス様のそばに……ディアナに……竜の国にいたいの……」


ううっ、てやっぱり泣けてきてしまった。


だめだめ泣き虫。


へこんでないで、がんばらなきゃ!


「泣かなくていい。レティシアは、何処にも、帰らなくていいから」


「……がんばる! 戦うから、ドラゴンさんも応援してね!」


「うん。応援する。……気晴らしに、空、飛んだげるよ、おいで」


「わ……!」


ちっちゃいドラゴンに促されて、お背中に乗せてもらった。


金色のドラゴンの背中に乗せて貰って、あっというまに地上から遠のいて、高く高く舞い上がって、空を飛んでたら、またちょっとへこんでいたレティシアの気持ちは強くなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る