第327話 サリアの災いを呼ぶ姫 24

「あんなちっちゃい子も生徒さんなんですね」


「小さな子から、祖父祖母の世代の方まで。若い時には学校なんていけなかったから、とお年寄りも楽しそうです。……ただ、あの子たちはちょっと魔力が強すぎて、特別かな……」


ちびちゃん達と別れて、レティシアはカイと建物の中へ入る。


「力の制御がまだ大変そうでしたね」


そんなに魔力が溢れてるなんて凄いなー。


フェリス様が魔法でお茶とか淹れて下さるから、レティシアも見慣れて来たけど、サリアではそんなの全然……。


「自分では制御ができない子というのは、親も扱いに困るようで、こちらに預けられます。親のいない子もおりますし……」


「ああ、それで、フェリス様が親代わりって……」


ずいぶん若い親代わりの父! フェリス様が十二歳とかのときの子になっちゃうわ。


「はい。あの子達もですが、私も十歳のころ、両親を病で失い、空腹のあまりフェリス様の馬車の前に倒れて拾って頂きました。それ以来、フェリス様が親代わりに身元を保証して下さって……」


そんな大変な出会い……。無事で良かった、カイさんもフェリス様も……。


「カイさん、フェリス様より年上ですよね?」


まあ、うちの旦那様ったら、結婚前から御自分より大きな子供持ち……!?


「はい。今年、二十三歳になります」


「フェリス様が親代わりなら、私はカイさんのお母様!?」


「え。いえ。そんな、レティシア姫、お、畏れ多い……!!」


私も、うーん、五歳にして二十三歳の息子が……まあ涼し気なイケメンでよさげな息子だけど、とふわーんと首を傾げてたら、カイさんが真っ赤になってしまった。何故、真っ赤に?


「わ、私などの、は、母上などと、と、とんでもないことですが、姫の、や、やさしい、お、御心、感激に堪えません……レティシア姫は、我が大恩人フェリス様のお妃となられる御方、この身もこの命も全て捧げて、姫を御守り致します」


まあ。カイさんをだいぶ狼狽えさせてしまったわ。


そうね。


こんなちっちゃい子にお母さんぶられても、赤面困惑のいたりよね。


「いえ、私など、とるにたりぬ者ですから、守らなくても全然大丈夫です! 共に我らが推しフェリス様をお守りしましょうね!」


「わ、我らが、オシとは?」


「あ、そこは気にしなくて大丈夫です! 私も、カイさんやあの子達の母代わりとして、フェリス様のお役に立てるように、この国のことをたくさん勉強して、立派なディアナの貴婦人をめざしますね!」


カイさん23歳なら、好青年だし、もうすぐお嫁さんとか来るかも知れないわ!


結婚式に呼ばれたら、フェリス様、魔法で私を大きくしてほしいわ(気が早い)!


母親代わりがちびすぎて恰好つかないわ(かなり、やる気)!


「は、母代わりなどと、もったいない……どうぞ、私のことはカイとお呼びください、レティシア姫」


「……カイ?」


そうね、息子にさん付けじゃ変ね(もっといろいろ問題あるけど)!


カイさんが真っ赤になって照れまくってるし。


「私の母はサリアの王妃で、サリアのすべての子達の母でした。はるか遠く及びませんが、私も、シュヴァリエの方たちや、フェリス様を拠り所となさる方の母となれるよう、早く大きくなりたいです!」


いまはイザベラ叔母様が、サリアのすべての子達の母かと思うとちょっと不安だけど、人の振り見て我が振り直せよね。うちのフェリス様の片割れとして、何か出来るようになりたいなー。


「薔薇の姫、レティシア様。竜王陛下はやはりフェリス様にふさわしい姫を授けて下さいました」


それはどうでしょう? いまも故郷から災いなす姫とか言われてますし、ちっともふさわしくないんですが、と思いながら、カイが何故かとても感動している様子なので(何故だろう? ちびだけど、お母さんできて喜んでくれてるのかな?)、レティシアはにこっと微笑んでみた。


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