第325話 サリアの災いを呼ぶ姫 22

「フェリス様!」


「カイ。元気にしてたかい?」


「はい! お逢いできる日を待ちわびておりました!」


白い魔導士のローブを纏った青年が茶色い瞳を輝かしている。


「レティシアも魔法の授業を喜んでたから、今日は魔法の家に寄ろうと……カイ。僕の婚約者のサリアのレティシア姫だよ」


魔法の家て何だろう? わくわくわくわく!(そもそもフェリス様を信頼しすぎて、何処に行くかも聞いてなかったわ……今日も、獲れたての苺食べられるかなーくらいしか……)


「ようこそ、レティシア姫。シュヴァリエは新たな薔薇の姫のお越しを待ち侘びておりました」


フェリス様の御人徳だと思うんだけど、何処でも、こんな子供なのかと奇異な眼差しを向けられることがない。シュヴァリエは心から薔薇の姫を待ち望んでいたのだという気配が伝わってくる。


「おいでは結婚式の後になるかも、とお聞きしてましたので、結婚式前にお帰り頂けて嬉しいです!」


まして、今回、竜王剣の件で王太后からフェリス様が一度は謹慎させられたことも知れてはいるのだと思うのだけど、王宮側の事情など、シュヴァリエには全く及ばないようだ。


「初めまして。美しい季節にシュヴァリエに来られて嬉しいです」


「きっと竜王陛下が、レティシア様が一番美しいシュヴァリエと出逢えるように、取り計らってくださったのです」


「……レーヴェにそんな詩心あると想えないが」


「フェリス様ったら」


フェリス様、おうちのなかじゃなくてお外なんだから、竜王陛下もっと敬わないと、とめっと見上げたら、フェリス様が微笑っていた。


やっぱり、魔法仲間の人とは仲良しだから、お外だけど、そういうこと言ってもいいのかしら?


「姫君が幼いとお聞きして、レーヴェ様の悪戯心を案じておりましたが、仲睦まじい御二人の御様子に安堵致しております。……フェリス様、何やら王都で、リリア教徒と捕り物騒ぎをなされたとか? ……何故、我らに一言、御声をかけて頂けなかったのかと? 飛んで参りましたのに」


あ! レティシアが無理やり偵察連れてってもらって、途中で返品されちゃったやつね! 


そうだよね、推しの一大事とあれば、馳せ参じたいですよね、カイさん!(親近感)


「シュヴァリエから人を呼んだりしたら、それ見よ、フェリスが謹慎に不満で、魔導士の一軍を連れてきた、て義母上に怒られちゃうよ」


「とんでもございません、我々はそんな危険な者ではございません。領主を愛するシュヴァリエの善良な領民です」


なんだろう。善良な領民さん、えらく圧があるわ……私が魔法を使う人に慣れてないだけかしら……。


「フェリス様、レティシア様、お帰りなさいませ。フェリス様、よろしげれば、少しお話を……」


「レティシア。魔法の家を案内してもらってて?」


「はい、フェリス様」


そうだ。フェリス様が建てたっていう図書の館も行きたい! 後で行けるか、お伺いしよう!

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