第301話 フェリス宮、女子会(ちょっと違う?)
「レティシア様。フェリス宮のサキ様とリタ様から朝の御挨拶を差し上げたいと……」
朝食を終えて、フェリスは来客がということで、レティシアがお部屋で読書でもと思っていると、声がかかった。
「ホント? サキとリタと話せるの? 嬉しい!」
そんなテレビ電話みたいな機能が! 遠くの国で起こったことも、一瞬でディアナにいても知れたりして、魔法が発達してる国は、サリアとは違うな~て感動!
特別の部屋に行くのかと思っていたら、こちらで繋げられますので、とハンナが椅子を促してくれて、いつもレティシアが使っているドレッサーの鏡に、フェリス宮の見慣れた女官二人の姿が現れた。
「レティシア様。おはようございます。いかがお過ごしでしょうか?」
「レティシア様、おはようございます! 御不便はございませんか? 姫様のお世話に女官が足りないようでしたら、ハンナ様、一声かけて頂ければ、私すぐさまそちらに参りますよ! 私は統括のサキ様と違ってこちらをお休みしてもそんなにフェリス宮に負担は……」
これ、と相変わらずサキに横から諫められているリタ可愛い。
わーん、嬉しいー!
シュヴァリエとっても快適だけど、二人に逢いたかったー!
「サキ、リタ、おはよう。逢いたかった! こちらでもとてもよくして貰ってて、シュヴァリエの薔薇祭すごく華やかなの。シュヴァリエの綺麗な街並みが薔薇の花で埋まってて、びっくりしちゃった。二人にもお祭見せたい! そしてね、フェリス様がね、私のサイファを……」
ああ、サイファの話をしようとすると、つい涙ぐみそうに。泣き虫じゃないのに。
「愛馬のお話、私共も伺いました。よろしゅうございましたね、レティシア様。お母様の琥珀の首飾り、レティシア様の琥珀の瞳の色と、よくお似合いでございます」
うぇーん、サキの声優しい……。
「フェリス様のレティシア様への御寵愛の深さのせいか、こちらの宮にもレティシア様あての贈り物が凄いんですよ! 可愛らしい御菓子、まだ御戻りじゃないでしょうから、そちらのほうへお贈りしますね!」
「うん。でも、お菓子とかは、そちらのみんなで食べてくれても……」
「いえ。せっかくレティシア様にと頂いてるお菓子ですから。こちらでしっかり検閲もしておりますが、レティシア様は、フェリス様のご確認のあとに、お召し上がりくださいね、この世には悪人もおりますから」
「レティシア様? 少しお疲れですか? お顔の色が?」
「あ、ううん。何でも。……レーヴェ神殿からフェリス様に急なお話て何かなって……」
フェリス様、勝手にサリアに行っちゃったから、誰か偉い人に叱られるんじゃ、とレティシアはずっと心配している。だって朝から魔法省やレーヴェ神殿からのお話て何だか物々しい。
「レーヴェ神殿でしたら、レーヴェ様の愛し子のフェリス様には甘い、と言われてるくらいですから、そんなに御心配なさらなくても大丈夫ですよ」
サキがあやすように言ってくれる。
「本当?」
少しでもレティシアを庇った者が、明日の朝には遠ざけられて、サリア王宮からいなくなった。どうもあの記憶がよくない。
叔母様がレティシアを見る、あの疎まし気な眼が苦手。
いかにも自分が邪魔者なんだと思わされる。
それにフェリス様を見つめる叔母様の眼がなんだか蛇みたいで怖かった。
心配しなくていいのに。
サリアにいる叔母様がフェリス様に何かできる訳ないのに。
誰かがレティシアからフェリス様をとりあげたりしないのに。
しゃんとしなきゃ!
「それに神殿は、先日の、竜王剣の疑惑リリア教徒捕縛の件でフェリス様には感謝されてるかと……」
「じゃあお叱りじゃなくて御礼かな」
「そうですよ! フェリス様がお叱りを受ける覚えはございませんが、御礼ならたくさん言って頂きたいですね! 神殿からも王宮からも! それに何より、御二人の結婚式の御仕度のお話かも知れませんしね」
力強くリタが頷いてくれると、本当のところはわからないけど、何だかほっとする。
僕のレティシアの婚礼をちゃんと祝ってくれてるのだろうか? とフェリス様、心配してた。
サリアを出るときのレティシアは婚約の為に喪服を脱ぐのさえ気が進まなかったのに、いまは結婚式でちいさな花嫁貰ってフェリス様が笑い者にされないように、背丈が欲しいよー! と想ってる。
(フェリス様を嘲笑するのは、ちょっと勇気がいりそうな気はするんだげど……)
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