第288話 少しずつ、君に心を奪われていく

「今年はね、そんなに行事に顔出す予定にはしてないけど、レティシアが嫌じゃなければ来年からは一緒にいろいろ出ようか?」


「はい。私にできることがあれば」


お父様もサリアのいろんな式典でお手振りしてたけど、フェリス様はご領地の方と親しいせいか、なんだか少し雰囲気違ったなー……。「自分の場所」感が高いと言うか……。


「昨日の様子見てても、皆もレティシアが来てくれたら喜びそうだ」


「ちっちゃい妃で嫌がられませんか?」


「ちっちゃい領主には僕の代から慣れてるからね。レティシアにとっても、シュヴァリエは他より過ごしやすいんじゃなのかな?」


髪を掻き揚げながらフェリス様が言う。ちょっと眠そう。


「……フェリス様。レティシア様もこちらでしょうか? そろそろお目覚めに……」


「ああ、無粋なうちの随身が来た」


残念そうなフェリス様。


……? フェリス様ってこんな色っぽかったかな?


なんか凄く綺麗だけど、ちょっと人形みたいな雰囲気あったけど……。


ご領地だから、安心して、寛いでらっしゃるのかな?


「朝ごはんの時間ですー」


「お腹空いた? レティシア?」


「いえ。それほどでもないんですけど。フェリス様と朝食が嬉しくて」


「それは僕もだ。レティシアと食事するのは楽しい」


起きようか、とフェリス様が起き上がって、レティシアに手を貸してくれる。


んしょ、とフェリス様の手を借りて起き上がる。くまちゃんも一緒。


「フェリス様。マーロウ様から、御手の空いたときに、お話したいと……」


マーロウ先生? 魔法教えて貰った先生だー!


「それは……御小言だな、恐らく」


ああ、とレイの言葉に、フェリス様が天を仰いでる。


「フェリス様? 叱られますか? もしかして、私のサイファの為に魔法でサリアに行ったから?」


たしか、マーロウ先生は魔法省の偉い人の筈……。


「いや、たぶんサリアのことではないよ。レーイ、笑いを堪えてないで、レティシアを部屋に送ってあげてくれ」


「畏まりました、フェリス様」


「フェリス様。もし昨日のことで叱られるなら、私が……」


「ううん? 違うよ。サリアでは何も壊してないし、王妃様に二人で挨拶もして、サイファを迎えたんだから、レティシアは何も案じないで。僕が叱られるなら、他のことだよ」


ホントかな。急に二人でサリアに行ったりして、空間歪めたとか怒られないのかな?


二国間の魔法の移動にも、現実の移動と同じく、それなりに制限があるかもだし……。


「今朝のドレスに着替えておいで、レティシア。朝食にはちゃんと間に合うように行くよ」


「フェリス様。叱られるときは一緒に叱られますから、ちゃんと呼んでくださいね」


「承りました、僕の姫君」


額にキスされて、レイとともにお部屋に戻されてしまったけど……。


「レイ、フェリス様は本当にマーロウ先生に叱られませんか?」


「マーロウ先生はフェリス様贔屓なので大丈夫ですよ。御小言を賜るとしたら、サリアの件とは別件です。レティシア様はご案じなさいますな」


レイはそう言うけど、ううう、やっぱり心配、フェリス様……。

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