第283話 レティシアの守護者
「おそろしい病が王と王妃の命を奪い、レティシア姫だけが生き残った」
「春乃さんち、ご両親亡くなって、雪ちゃんだけが生き残ったんですって可哀想にねぇ」
「不吉な王女だ。一人でおかしなことばかり言っている。隔離とはなんだ。病人に触れたら手を洗えと? まるで病人を穢れた者のように」
「レティシア姫は呪われた王女だ。死の神があの姫だけを残していった」
知ってるわ。そんなこと。
誰が責めなくても、レティシアがいちばん思ってる。
どうして、レティシアの家族ばかり若くして死んでしまうの?
雪……、レティシアが呪われてるからなの?
「呪われたレティシア! おまえが薔薇の姫などとふさわしくないわ!」
イザベラ叔母様が燃えるような瞳でレティシアを睨んでいる。
「不気味なレティシアが薔薇の姫なんて変よ! サリア王家のものよ、琥珀の首飾りをかえしなさい! フェリス殿下が優しいからって調子に乗らないで!」
「レティシアはおかしな娘! ディアナ王弟がレティシアなどを気に入るはずがない!」
従兄弟のアドリアナとアレクが決めつけている。
怖い。いや。来ないで。盗らないで。他のはみんなあげるから、母様の琥珀だけレティシアにおいていって。
「僕のレティシアをいじめるな!!」
ぎゅっとレティシアは金髪の男の子に抱きしめられる。
あ、あれ?
フェリス様?
フェリス様、ちっちゃい? レティシアと同じくらい?
「僕の妃を苛めるものはみな燃やす」
ちっちゃいフェリス様がそう言うと、炎がイザベラ叔母様とアレクとアドリアナを取り巻いた。
「いやだ!」
「な、何これ……!」
「熱い……!」
「……!? フェリス様燃やしちゃだめです!」
ゆ、夢? 夢だから燃えても大丈夫?
でもダメ。
なんか小さいフェリス様の教育に悪いから。
「では土砂で埋める」
「う、埋めるのもダメです」
「何故? レティシアを泣かすものを懲らしめたい」
不満げにレティシアを見つめる小さいフェリス様。
か、可愛い!
「わ、私、もう大丈夫です。フェリス様がいらしたので」
「僕の気がすまぬ」
ちいさいフェリス様、頑固。
「何なのその子は!」
「レティシア、この炎は……!」
「み、みずを……ぐ、ぐえ!」
炎を消すように、水が落ちてきた。
叩きつけるような、土砂降りで。
「い、いたい」
「いや、痛い! もう雨いらない!」
「ドレスが……髪が……!」
「水神の娘を呪うなら、水には気をつけるといい」
ちいさなフェリスが冷たい声で告げた。
「水神の娘?」
「僕の妃は水神の娘。うちのこなんだから、レーヴェの娘だ」
うちのこ。フェリス様のおうちのこ。レーヴェ様のおうちのこ。
サリアの呪われた王女ではなく、レーヴェ様のおうちの花嫁。
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