第257話 また二人で行こうね

「レティシア、サイファと何話してたの?」


 レティシアの手を繋いで歩きながら、フェリスが尋ねる。


「え? フェリス様のお話を……」


 フェリス様かっこいいでしょ、と話してたのだが、それを御本人に言うのは、いかがなものかと。


「僕の? 僕はサイファに気に入って貰えるかな?」


「はい。サイファ、フェリス様のこと、気に入ってると思います」


「ホントに?」


「ホントに。気に入らない人の時は、もっとサイファ、態度悪いので……、馬鹿にして、そっぽ向いちゃうんです」


「それは大変だ」


 笑うフェリスを見ると、ああ、おうちのフェリス様だ、と何だかレティシアは安心する。


 お外にいるときのフェリス様と、おうちにいるときのフェリス様は、違う。


 おうちのフェリス様は、優しくて、のんびりしてて、笑い上戸で、可愛い。


 お外のフェリス様は、ちゃんとしてて、隙がないかんじかな……。


「レティシア、サイファが来て嬉しい?」


「はい!」


ちからいっぱい返事した!!


「レティシアは誓います! この御恩を、いつかきっとお返しします!」


「ううん? それはレティシアの幸せそうな顔で、充分……レティシア、ほかに、サリアから呼び寄せたい者は? お気に入りの侍女とか?」


「い、いえ……サイファがいてくれたら充分……きゃ、きゃあ、フェリス様」


ひょいとフェリスに抱き上げられて、レティシアは驚く。


「ホントに?」


「フェリス様、降ろしてくださ……」


な、なんで!? 抱きあげられたの!?


「疲れたでしょ? お出かけもしたし、転移もしたし」


「いいえ。私は全然……お出かけも、凄く楽しかったです」


「いちご摘み?」


「はい! 薔薇祭も」


これからは、サイファとも一緒に行けるんだな、て嬉しさがじわじわ湧いてくる。


「薔薇祭は暫くやってるから、また行こうね。みんなレティシアと逢えたら、喜ぶよ」


「……私で、大丈夫でしょうか?」


抱き上げられたまま、レティシアは尋ねる。


「僕はレティシアがいい。レティシアでなきゃダメだよ」


反則だ。そんな言葉。


レティシアに大甘なフェリス様。


フェリス様の意見とシュヴァリエの領民さんの意見がぜんぶ同じかどうかはわからないけど。


「……わたし、フェリス様の妃として、恥ずかしくないように、いっぱい、いっぱい、シュヴァリエのこと、勉強します……」


「レティシア、どうして泣くの?」


「フェリス様が……」


レティシアがいいって。


こんなちびっこでいいわけないのに。


それでも、そう言ってくれた。


この優しい人を、幸せにする妃になりたい……。

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