第249話 幸運を呼ぶ竜

「やたらとお茶に誘ってたけど、イザベラ王妃はお茶好きなの?」


「……えっと……」


膝に乗せて貰って、涙をキスで拭って貰って、背中を撫でてもらっていたら、レティシアも少し落ち着いてきた。


「フェリス様御自身を見て、私を、お嫁にやったことを後悔してるのかも?」


「何故? 僕の貌が怖そうだから? 叔母様が後悔してても、僕、もうレティシア帰さないけど」


フェリス様って、もろもろ有能なのに、自己評価だけ振り切れて変なの……。

もうちょっと自惚れるべじゃないかしら?


「いえ、フェリス様はとってもお美しいので……」


「ああ……レーヴェの貌が好きなタイプの人なのかな?」


違います、フェリス様。

竜王陛下を知らずに逢っても、フェリス様は充分、魅力的な方なんです……。


「サリアでは、……そのう……フェリス様の噂はあんまりよくなかったので……、実際のフェリス様が、こんなに素敵な方なら、叔母様の娘のアドリアナをやるべきだったと思ってらっしゃるのかも……?」


「………? 娘さんが何とか言ってたものね。……人って、そんな大胆に気が変わるもの? 結婚て大事なのでは……? 僕もサイファのようにレティシアを取り上げられたら飢え死ぬよ」


「ダメです、そんなの! 私にはわかりませんが……イザベラ叔母様にしては、ひどくフェリス様に優しかったなと……」


二人で不思議がってみる。でも、レティシアには、サリアに居た頃も、イザベラ叔母様の考えは一度もわかったことがないので、想像の域を超えている。


「もしかしたら、後でいい方の噂を聞かれたのかも知れませんよ? レーヴェ様の血を強く受けた方の伴侶となると、幸運を得るとか、長命を得るとか、国が富むとか……」


二人でわからないね、と悩んでいると、レイが考察してくれた。


「それこそ、まったくの迷信の域だよ」


「フェリス様といると幸運になるんですか?」


幸運を運ぶ青い鳥のフェリス様? ちょっと可愛い。


「ないよ。そんなだったら、僕自身がもうちょっとましでなきゃ……人に幸運を運ぶ竜をきどるには残念過ぎるだろう……」


「残念じゃないです!! わたしはフェリス様と逢って幸せになったので、フェリス様は幸運を呼ぶ竜だと思います!!」


フェリス様は、何処に御出してても恥ずかしくない、私の推し様ですとも!!


「……それはレティシア限定というか……、ああ、でも、そうか、伴侶を幸福にするというなら、レティシアが幸福なら、叶ってるのかな? それなら、いいかな。僕はレティシアを幸せにしたいから」


「はい。フェリス様は幸運を運んで下さる竜だと思います」


あれ………? だからイザベラ叔母様もフェリス様が惜しくなったの?


でも、叔母様に、おかしな欲で、フェリス様に近づいて欲しくない……。

フェリス様、王太后様の御相手だけでもじゅうぶん疲れてるのに……。


「いえ、レティシア様、私の申し上げたのは、もう少し呪術的な竜王家の伝説の話と言うか……、まあ、あの、当家としては、フェリス様のおかげで充分繫栄してますし、御二人が幸せならそれでいいんですけどね」


レイが、額と額を寄せ合っている私達を見て、苦笑いしていた。


うん。サリアからここには来れないし、ディアナの方が国としては格上だから、叔母様はフェリス様にきっと何もできないと思うけど、うちの実家の困った親族のせいで、フェリス様に迷惑かけたくないー!!


ううう。今夜から気合いれて、竜王陛下にお祓いのお祈りしよう……。


悪霊退散……!!

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