第240話 随身は密かに小さな花嫁を崇める

「眉目秀麗、文武両道、何処にお出ししても恥ずかしくない当家の自慢の我が君が、このままろくなもの食べずに、他人に興味も示さず、本ばかり読んでる隠者と化すんじゃ……? と案じていたら、お食事はちゃんと食べて、嫌なことは嫌と言って、ときちんと意見をしてくれる方が嫁いでいらしたんです。これまで一度も、どんな方であろうと、フェリス様に御意見できる御令嬢などいらっしゃいませんでした。しかもうちの偏屈なフェリス様が、この薔薇の花の精のような小さな可愛いレティシア様に頭があがらない……どんな奇跡かと……家人一同でレティシア様を拝まんばかりです」


「レイよ、レティシアを褒めたいのか、僕を貶したいのか、どちらなんだ? 主に後者としか思えないんだが……?」


「レイ、おもしろーい。物語に出て来る、じぃやみたい」


芝居がかったレイの様子をレティシアはおもしろがり、フェリスは美しい眉を寄せている。


「ありがとうございます、レティシア様。フェリス様のお世話をしてるあいだに、若くしてだんだん老けが……、そんな私も、これからは若返れる予感が致します」


フェリス様はレティシアに限らず、わりと万人に優しい気がするけど、表向きは引き籠り、実際はお部屋から何処にでも自由気儘に行き放題の美しい主人を持ってたら、一番の随身のレイは老けるかもしれない……。


レティシアも転移魔法覚えたら、何処にでも行き放題なのかしら?


「フェリス様! 可愛い花嫁様に食べて頂けるように、うちの野菜をどんと御邸に持って行きますね!」


「フェリス様、うちのジャムをお持ちくださいな! 可愛らしい花嫁様にぴったりの!」


「フェリス様が大人気……」


推しのフェリス様が、街の方々にとっても明るく大人気で、レティシアも嬉しーい! 


ここ楽しい!


王宮離れていいのかな? て心配だったけど、来てよかった!(現金である)


王宮にいても、実際は変な噂よりずっとフェリス様人気なんだな~というのは、肌でわかるんだけど、あちらではやはりいろんな気遣いがあって、ちょっと緊張感あるかんじだから……。


「レティシア、一緒に歩いて、いろいろ皆からもらってあげたら、みんなが喜ぶ。……て、結局、僕につきあわせて、仕事させてごめん」


 むしろ、領地で休暇だ、て言ってたフェリス様、ホントに? と疑ってたので、この休んでてもつい働いちゃうかんじがフェリス様らしくて安心しました(完璧な金髪碧眼ヨーロピアン王子ビジュアルを裏切って、元社畜の日本人娘から見ても、とても他人とは思えない、働く日本人男子みたいな方だ)。


「いいえ?  こんな楽しい仕事なら、いくらでも誘ってください」




王女様のお手振り仕事ならサリアでもしてたんだけど、フェリス様が丁寧な領地経営されてるからだろうけど、シュヴァリエの人は笑顔がよくて、楽しい。


それに、フェリス様にはあの嫁は小さすぎる、奇妙過ぎる、て、もっと悪く言われるかと思ってたら、大歓迎してくれてほろりなの……みんな優しい……嬉しくて、お手ふりなんかしまくっちゃうよ……(それなりに自分が小さいことは気にしてるレティシアである)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る