第237話 レティシアと同担

「フェリス様!」


「フェリス様、お帰りをお待ちしておりました。なんと可愛い方をお連れになって!」


レティシアと楽しく苺を摘んだのち、にぎやかな音楽や人の声がするところへ、フェリスは馬を向けた。


薔薇のお祭り期間中のせいか、そこらじゅうに薔薇の生花が飾られている。


素朴な装いのシュヴァリエの街の人々が、馬上のフェリスとレティシアを見つけると、あっというまに取り囲まれてしまった。


「フェリス様、お帰りなさいませ!!」


「ただいま。今年の薔薇の出来はどうかな?」


「上々ですね! フェリス様が暫くいらっしゃるなら、薔薇水の出来のよいものをお持ちしますね!」


「フェリス様! その可愛い方が花嫁様ですか?」


「そう、こちらが、サリアからいらしたレティシア姫だ」


「なんてお可愛らしい! きっと、フェリス様とお似合いの凄い美人におなりだ!」


「レティシアはこちらに慣れていないから、みな優しくしてやってくれ。このシュヴァリエの女主人になってくれる姫だよ」


「ようやく、わたしたちの薔薇の姫がいらっしゃった……!」


「………? こんにちわ?」


きゃあきゃあと薔薇で髪を飾った少女や少年たちも歓声をあげてる。

可愛いので、思わず、レティシアも馬上から手を振ってしまう。


誰かが生演奏で奏でている弦楽器の音が明るく響き渡っている。

そこかしこで、陽気な声が聞こえ、食べ物の屋台の美味しそうな匂いがしている。


薔薇の姫て何? なになに?

薔薇の国だから、御領主の妃は薔薇の姫なの?


それにしても、意外!(失礼)


フェリス様、領民の方々と、とっても距離が近い……!


竜王陛下に似たフェリス様の美貌で、王宮とおなじく少し遠巻きにされてるのかと思ったら、領民の方々、とってもほがらかな笑顔で、フェリス様を熱く取り囲んでらして、うちの御領主様が好きで仕方ない! てかんじ。


(ここ、もしや、レティシアと同担のフェリス様担の方だらけ……? 天国!?)


昨日、王宮にいたときは、王太后宮ではもちろん距離ありまくりだし(温度が下がるレベルに…)、騎士の方々は親しいけど、向こうは崇拝ってかんじだったし(フェリス様、竜王陛下似の王族だしね…)、ルーファス王太子様はレティシアと同じフェリス様担だけど、あんまり仲良くしてたら王太后様に怒られそうだしね……。

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