第236話 いちごを摘んで

お天気がよくて、空気が気持ちいい!


しかも、我儘いって、途中でいちご狩りに降ろしてもらっちゃった!


いちごを摘む!!


ちょっと子供みたいで(子供だけど)恥ずかしいけど、レティシア一人で乗せるのが不安、というフェリス様のお話には納得したので、フェリス様と二人で白馬に乗せて貰った。


フェリス様と一緒に騎乗するのは、お父様やウォルフのじぃに乗せて貰ってたのとは、全然違う感じ……。


馬に騎乗したフェリス様、かっこいいので、ちょっとドキドキする……。


前世で、外国の映画や、ヨーロッパの王室記事などで見た、優雅な白馬の王子様てかんじ。


昨日の夜は、魔法使いの仮装のフェリス様達と(仮装ではないのかな、フェリス様、魔法使いでもあるから)、王都にいたけど、いまは、青空の下、フェリス様の領地、シュヴァリエ。


「どうしたの、レティシア?」


「いえ。昨夜の魔法使いのマントも素敵だったけど、やっぱりフェリス様の御顔がよく見える方がいいなーって」


ドラえもんのようなレイが、小さな藤の籠を出してきてくれたので、レティシアは藤の籠に苺を摘んでゆく。


「レティシアは僕の貌が好き?」


「……え? は、はい。す、好き、です」


真面目に聞かれて、ちょっと頬が熱くなって、困ってしまった。


「ホントに? レーヴェの絵姿より?」


「………? はい!」


そこは比べるところなの? 


でもいつもフェリス様気になるみたいだから、元気にお返事しておこう!


レティシアにしてみると、竜王陛下は神様なので、神棚とか仏壇とかお地蔵様とか座敷童子(!?)の域なのだが……。


竜王陛下に似てるからフェリス様が好き、とか、よほど言われたのかしら、フェリス様?


「レティシアが好きなら、いろいろ面倒もあるけど、僕の貌がこの貌でよかった」


こんなに綺麗な御顔なのに、竜王陛下似の御顔の苦労もあって、フェリス様可哀想なの……。


「そういえば、サリアの私のところには、婚約者のフェリス様の絵姿、届かなかったです」


普通は、政略結婚とはいえ(だからこそ)、事前に、婚約者の絵姿とか届くのね。

それはまあ、嘘八百の盛り過ぎた美男子とか美女の絵姿も届くわけだけど……。


「それは奇妙だね。僕が管理はしてないけど、流石にディアナから贈ってる筈なのでは……」


「……? 誰か破損したのでしょうか? うーん。それとも意地悪で貰えなかったのかな……私のフェリス様……」


ひどい。私のフェリス様の絵姿返して……。レティシアへの嫌がらせで、罪もないフェリス様の肖像画捨てられてたらどうしよう、と、今更ながらに残念に思う。


しみじみ思うけど、迫害されると、レティシア関連のいろんなものが被害を受けて、自分が辛いだけでなく、物にも人にも申し訳ない……。


「僕のところにはレティシアの肖像画届いてたよ。でも本人のレティシアのほうがずっと可愛い。あの画家はもっと腕を磨いたほうがいいね。随分暗いタッチで、あれじゃレティシアとわからないほどだよ」


「あ、それは、本当に、私が暗い顔をしていたのかも知れません。こちらに来てから、フェリス様のおかげで、よく笑ってますが……」


もともとのレティシアは明るい幸せな娘だったのだけれど、フェリス様との婚約時期は毎日泣き暮らしていたので……あれをそのまま描いたなら、画家は正直なだけで、下手な訳ではない。


「レティシア。これたぶん甘いよ」


「本当ですか?」


フェリスが摘んだいちごを、レティシアの唇まで運んでくれた。

レティシアは唇を開いて、フェリスの指からいちごを食べて、ご機嫌な顔になった。


「……美味しい!」


甘いいちご。


と言っても、前世のような糖度を増した甘さではなく、自然な甘さで、とても爽やかで、美味しかった。

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