第192話 目に見えぬもの
竜王剣の噂を、ここ数日の王宮の事件さえお見通しの、このいかにも噂好きのカルロのおじさんが知らない? じゃあそれは何処で流布されてるんだろう?
もちろんディアナは広いから、ここのカルロのおじさんが知らなくても、別の場所で広まっているとも考えられる。
竜王剣の噂が広がることで、もし得をする人がいるとしたら、それは誰なんだろう?
『陛下が竜王剣を抜けない』『竜王剣を操れぬ者にディアナ王の資格はない』
この噂で王太后様はフェリス様をお怒りになったけど、フェリス様はそんな噂知らなかったし、王太后様の八つ当たりで謹慎の憂き目に……なので、フェリス様は得をしてない。
カルロの御主人は、国王陛下も王弟殿下もはめられたのでは? と……どちらにしろ、誰かの見えない悪意が、フェリス様や陛下に触れて来るようで嫌だ……。
悪意というのは気づかないところに潜んでいる。
それをレティシアは父様と母様が亡くなって知った。
それまでレティシアの世界には悪意はそんなにたくさん存在してなかったので。
「………」
頂いた林檎ジュース甘くて美味しかったけど、何だかしゅんとしていたら、フェリス様の手がレティシアのほうに伸びて来て、ぎゅっと手を繋いでくれた。
フェリス様の手は父様の手とも母様の手とも違う。
父様や母様の手はなんだかレティシアの一部みたいな気がしてけど、フェリス様の手はレティシアとぜんぜん別のものだけど、安心感をくれる。
「王弟殿下も国王陛下も嵌めて楽しい人間なんて、いるんだろうか?」
フェリスは安心させるようにレティシアの手を繋ぎつつ、 穏やかにカルロの主人に水を向けている。
「そりゃー生粋のディアナを愛するディアナ人なら、そんな不届きな奴あいねーと思うけど、世の中、いろんな奴がいるから……レーヴェ様を邪神扱いする奴までいるんだぜ。あんな腹立つ奴ら、ディアナから出てって欲しいわ……」
「ああ、オレたちも、一昨日、広場で、神の絵を焼こうとしてる坊さん見たな。ああいう奴ら多いのか?」
「いやな奴らだろう? バチでもあたればいいのに。多くはないけど、最近増えてるというより、あいつら、仲間を増やそうとしてるのが腹立つわ。とっととリリアの神のお膝元ガレリアに帰って欲しいわ。この辺りにあの罰当たりな奴らの溜まり場できてて、ここらの治安が……」
「……その溜まり場というのは、どのへんにあるんだ?」
「お客さん、あんなとこに行っても、ろくな仕事見つからないぜ。あいつらも何かと人集めてるけど……詐欺みたいな仕事させられるのがオチだぜ。急場の仕事でも、もっと、いいとこで職探ししな」
「いや、ただの興味本位だ。職探しではない」
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