第189話 綺麗なところに隠しておきたいのに
「レイ。レティシアが吃驚するから、ドアから入るように」
「は。行き届かず、申し訳ありません」
「レイも……魔法使えるの?」
レティシアは確かにびっくりしていた。
何といっても、元が日本生まれだし、サリアでは魔法は魔法使いだけが使えるものなので……。
フェリス様はいかにも魔法使いっぽいけど、レイには全然、魔法のイメージがなかったのだ。
「は…。私は簡単な魔法しか使えませんが」
「転移魔法、凄いと思うの……! 私にも教えて欲しい……!」
転移の魔法が使えたら、どらえもんがいなくても、行きたいときに、何処にでも……!
「はい、もちろん、レティシア様のお望みとあれば……」
「レティシア」
「はい、フェリス様?」
ん? 何だか冷気が……。
「レティシアには、僕が教えるのではダメなの?」
「……フェリス様にも教えて頂きたいですが……あの……私でも出来そうな魔法を、レイにも習えたらいいかなーって……」
何となくフェリス様、拗ねモードな気がする。
何故……いつのまに拗ねたの……さっきまでご機嫌だったのに。
「フェリス様がお忙しい時に、私でお応えできることでしたら、何なりと御下問ください、レティシア様。……フェリス様、レティシア様がお困りですよ。貴方の従者に嫉妬しないでください」
「嫉妬……ではない。僕が教えたいだけだ」
「左様でございますか。とはいえ、何事も、天才からの教えというのは、一度でわかりにくいところもあるものです。ただ人の助手も居た方が、憂いはありません」
さすが、レイ。
なんだか、フェリス様のあやし方に慣れてるー!!
そうなの。
フェリス様だと偉大過ぎて、レティシアにはわからないこともあるんじゃ……と思ったけど、御本人にそうは言いいにくかったのー。
「では、フェリス様、レティシア様と御二人でお過ごしなら、私はまた改めて参りましょうか?」
「いや、レティシアも気にしてたから、ここで話して」
「………?」
んしょ、とフェリスの膝からレティシアはそっと降りる。
このままでもいいのに? とフェリスの碧い瞳が不満げだったが、レティシアとしては小さな貴婦人として、お行儀、ちゃんとしていたいので。
「例の……竜王剣の噂ですが、気になる所がございまして、フェリス様をお連れしようかと思ったのですが」
「……フェリス様? 竜王剣の噂、お調べになってたのですか?」
「僕がやってるとまで言われて、僕がまるきり何も知らぬのもと……」
え? とレティシアがフェリスを見上げると、悪戯を見つかった少年のような気まずそうな顔をしてらっしゃる。
「それはそうですね」
でも何か調べてるのなら、レティシアにも教えて欲しかったかも……。
「ちょっと外して、レイと出かけてもいいかな、レティシア?」
「………? 私もご一緒したいです」
「レティシアは危ないからダメ」
「どうしてですか? 私が行けないくらい危ないところなら、フェリス様も行かせたくないです」
「……う……」
平行線。
でも、負けない!
そんな危ないところなら、フェリス様も行っちゃダメだもん!
「いまのは、レティシア様の方が理がありますね……」
「レイ、そこでレティシアに加担するな。僕はレティシアを風にあてるのも嫌なくらいなのに……」
「 ? ? 私も婚約者として妻として、フェリス様が謹慎になりかけた原因は、とても気になります……」
風にもあてなかったら、酸欠になるのでは? フェリス様のなかのレティシア、どんな箱入り? と心中だいぶ不思議がりながら、レティシアは言い募った。
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