第188話 一緒にいると楽しいと思うことについて
「王宮で着てた碧いドレスも可愛いかったけど、この桜色のドレスは優しい色で、よりレティシアらしいね。こちらで揃えたもののなかに、気に入ったものはあった?」
褒めて頂くと、やはり女子としては嬉しい。しかも、フェリス様はレティシアに大甘なので……。
「たくさん、素敵なドレスを、ありがとうございます。多すぎてびっくりしました。とても全部に…袖を通せない気がするので、いくらか下賜させて頂ければとハンナと…」
「それはレティシアの望むように。レティシア自身の好みのものも仕立てさせないとね」
「いえ、ドレスはもう充分……。着替えを手伝ってくれながら、ハンナがフェリス様の子供の頃のお話をしてくれました」
「僕の? 昔から、好き嫌いが多かった話? 子供らしくない可愛げのない子だった話?」
「びっくりするほど綺麗な王子様がやってきて、この土地のことをきちんと調べて、わたしたちの富を私たちに返してくれました、て。……フェリス様は恩人だから、どんなことがあっても、王様が攻めて来ても王太后様が攻めて来ても、フェリス様とレティシア様をお守りしますって」
「有難いけど、そんなことは言っちゃダメ、と言ってあげて。僕の為に投獄でもされたらいけない。……それに、恩を感じるようなことではないよ。僕の前任者の仕事ぶりが、あまりにも最悪すぎただけだ」
「功績を誇らないフェリス様は美しいですけど。そこは謙遜しちゃダメな気がします。……あの切ないくらいの感謝の気持ちはちゃんと受けとめてあげて欲しい、です」
ふわって、森林浴か何かみたいに、ハンナの声から、あたたかい、綺麗な波動が寄せて来るみたいだった。
「……はい、我が姫」
レティシアが琥珀の瞳をきらきらさせて、フェリスを見上げると、フェリスが従順に頷いて、レティシアの手にキスをした。
「……いえ、私にじゃなくて、ですね、フェリス様……」
「うん。わかってる。……なんだかレティシアに叱られるのが嬉しくて」
「し、叱ってはないです」
「うん。僕の為の言葉だ。叱られるのは義母上で慣れているが、それとは全く違う」
「それは、諫ると言うか……フェリス様、私の指を食べてないで、チョコを食べて下さい。今日はお腹空きました?」
「空腹は相変わらずあまりわからないけど、レティシアが奨めるものを食べるのは楽しい」
「私も、さっき一人で食べてたら少し寂しくて……、フェリス様と一緒に食べる方が楽しいです」
不思議だけど、気の置けない女官でも一緒にいると、それなりには気を遣うのだけど、フェリス様とは一晩一緒にお話ししてても疲れないの……いや、フェリス様が何でもレティシアにつきあってくれてるからかもだけど。
「じゃあ、僕の姫には、僕が食べさせよう」
「……あ、の……」
フェリスが長椅子に腰を下ろして、レティシアをひょいと膝に乗せて、チョコレートをレティシアの口元に運んでくれる。
う?
魔法書は?
レティシア、一緒には食べたかったけど、こんなことをしにきた訳では……
「フェリス様……例の件なんですが、……、……う、わ、レティシア様、す、すみません……!!」
ふわっと空間が歪んで、そこからレイの姿が現われた。レティシアが習得したがってる転移魔法だ!
伏し目がちに、難しい顔をしていたレイは、フェリスの部屋にはフェリス一人だと思っていたらしく、フェリスの膝に乗せられてチョコレート食べさせられてるレティシアを見て、吃驚仰天している。
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