第187話 彼と一緒に食べたい気持ちについて

「フェリス様」


本邸でフェリス様のお部屋が遠い~とレティシアが嘆いたせいか、ここではフェリス様のお部屋は隣だった。お話にいくの、楽!  嬉しい!


「どうしたの、レティシア?」


「お邪魔ですか?」


「いや、大丈夫……何かあった?」


入って、とフェリスに招き入れられて、レティシアは部屋に入る。


「魔法書があれば、お借りしたくて」


「魔法書?」


「はい。私も、転移魔法とか、変化魔法とか、いろいろ使えたら、フェリス様を困らせた犯人を街に探しに行くのになあ……て考えてたら、魔法のお勉強しなきゃ、と思って」


「………。魔法が使えても、レティシアはそんなことしちゃダメ、危ないから」


あやすように、レティシアは金髪を撫でられる。


「でも、気になります」


「噂なんてどんな風にでも操作できるよ、きっと」


竜王陛下そっくりのお貌のせいもあって、いろんなこと言われてらっしゃるからかなあ、諦めることに慣れたような微笑。


「操作してる人がいるとしたら、その人が問題ですね」


「………」


フェリス様が停止した。


あれ、なんか、ダメなこと言った?


「……いまの、何かダメでした? フェリス様?」


「いや。レティシアはやはりおもしろいな、と思って」


「………!? おもしろい? 私にはあまり面白味はないと……私であんなに笑う人、フェリス様だけ……」


「僕は常に驚きの連続だけどね……、レティシア、何を持ってるの?」


「あ。フェリス様のところにもあるのかな、と思ったけど、このチョコレート美味しかったので……フェリス様に食べさせたくて」


レティシアは、部屋から、ルビーチョコレートの器を抱えて来ていた。


「ううん、チョコレートはレティシア用だと……」


「じゃあ一緒に食べましょう」


フェリス様のお部屋には存在してなかったなら、持ってきてよかった~、とレティシアは嬉しくなる。


「レティシアはいつも僕に何か食べさせたいんだね?」


「最近、美味しいもの食べると、フェリス様と一緒に食べたくなるんです。……はい、どうぞ、食べてみてくださいね?」


「………、………」


あれ? またフェリス様がフリーズした。


お嫁さんになるより先に、謎のお母さんマインドすぎかしら?




でもやっぱり一人で食べるより、フェリス様と食べる方が楽しい!


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