第186話 レティシアと竜王陛下とチョコレート
「美味しい、このチョコ」
ハンナが退出したので、レティシアは一人、竜王陛下の肖像画を愛でながら、ハイビスカスの御茶とルビーチョコレートを食べている。
「フェリス様にも食べさせたいな」
レティシアは、最近、美味しいものを食べるとフェリスに食べさせたくなる。レティシアに食べさせられてるときの困ってるフェリス様可愛いので。
今日はずっと一緒だったせいか、隣にフェリス様がいないと、何か足りないような気分になる。
「竜王陛下、私さっき王太后様の勘違いって勝手に言っちゃったけど、実際、竜王剣の噂ってどうなってるんだと思います……?」
レティシアももう少し大きくて、異世界転生物語の素敵な主人公のように、魔法の加護もたくさん! なら、フェリス様の為に街に調査に行きたいのだが、いかんせん、レティシアには何の特殊能力も……。
「うーん、転移魔法とか、変化魔法とか、いろいろ使えるようになりたい!」
やっぱりチョコレート食べて一人まったりしないで、魔法書を読んで実習のひとつもするべきだ。
「あ。でも、魔法の本、本邸においてきちゃった……。ううん、きっと、ここにも何かあるはず、ですよね、竜王陛下!」
勉強なんてそんな焦らず、ちびちゃんはもっとチョコレートをお食べ、とレーヴェなら甘やかすこと間違いない。
「竜王陛下、私、ホントにフェリス様と結婚するんでしょうか……?」
いやもちろん結婚の為にこの国に来たんだし、みんなそのつもりだし、フェリス様だって、僕のレティシア、て言ってるけど……。
「こんなに大事にして貰って、フェリス様、あんなにいい方で……、私がお嫁さんでいいんでしょうか?」
(何? レティシアはフェリスが悪い奴なら、政略結婚の餌食にしてもいいつもりだったの?)
「いえ、そういう訳じゃないんですけど、噂通りの変人殿下だったら、離れかどこかにお部屋を頂いて、王弟殿下に忘れ去られた姫として、元気に生きていけたらいいかな、とか勝手なこと思ってて……」
そんなざっくりした前向きなのか後ろ向きなのか謎な人生プランだったんだけど、フェリス様、凄くいい人で、大事にして下さるんだけど……。
「あんなにいい方で、いまや私の推しなので、もっとお似合いの、相愛のお姫様と結婚させてあげたくて……」
(それ、フェリスに言っちゃダメだよ。たぶんあいつ、レティシアに愛されてないってへこむから)
「いえ。フェリス様のことは、全力で推してるんですけど、だからこそ、申し訳なくて……。せめて、私の前世の記憶のことくらい、お話するべきでしょうか……」
思い悩んでるの半分、天然半分で、レティシアは『誰』と会話しているのか、気が付いていない。
(それはオレなら拘らないけど。フェリスは、レティシアが大事な秘密を教えてくれたら、喜ぶかも?)
「私の二度の人生で、こんなに大事にして下さった方はいないので、やはり、そんな方と、結婚するというのに、隠し事はよくないですよね……」
(あのさ……、うちの一族の寵愛って、本当に際限がないから、重いときは重い、ウザいときはウザい、て、蹴とばしていいんだよ、レティシア……)
噛み合ってるのか噛み合ってないのかわからない、ふわふわした会話をしつつ、フェリスの望むようにかどうかはともかく、レティシアに大事には想われてはいるみたいで何より、と、レティシアからお供えされたチョコレートを摘まむレーヴェであった。
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