第182話 レティシアの影の守護者
「小さく擬態してまで、レティシアに好かれたいフェリスの必死さよ。氷の美貌の王弟殿下も形無しだな」
「レーヴェ。わざわざ僕をからかいについてきてるんですか?」
フェリスがレティシアを女官達に任せて、自室で一人になると、ふわふわと空間に寝っ転がったレーヴェが浮かんでいた。
「いやだって、うちの家系、オレを筆頭に執着がひどいから。心配になるじゃないか、うちの可愛いレティシアが」
「僕のレティシアであって、レーヴェのレティシアじゃありませんから」
「何を言う。我が家系の末の王子の嫁。うちの嫁。……すなわち、オレの可愛い娘。年端もいかないオレの可愛い娘に、不埒な事したら、うちの可愛いフェリスといえどオレがシメる」
「………!? なんか変じゃないですか、その論法!?」
「ぜんぜん変じゃない。オレはいつも小さいほうの味方」
「まあ、レーヴェはいつも子供の神様ですよね……」
フェリスは誰よりもその恩恵にあずかってるので、そこは否定できない。
「そう。フェリスが可愛い嫁と仲良くなるのはめでたいが、レティシアの純潔は、年頃になるまでは、オレが守る」
「………! 僕を何だと思ってるんです! レーヴェがわざわざ守らなくても、レティシアが大きくなるまで何もする訳ないでしょう! 」
「それならいいんだが。フェリスがレティシアにメロメロすぎて、最近、じいちゃん、心配に……いいか、おまえ、弱ってるのを盾に、人の好いレティシアに甘えて好き放題するなよ」
「……してません!!」
「そうかあ? あんな魔力の強い娘に、魔力が減ってたら、どうぞ遠慮なく私から食べて下さいね! なんて言われたら、純情なフェリスじゃなくても、そこいらじゅうの精霊も魔物も総落ちだよなー。コワモテのフェリスの嫁だからいいけど、うちの可愛い嫁、危なっかしすぎる……」
「コワモテって……僕の貌、レーヴェの貌ですけど」
「………。フェリスはフェリスでこんな天然だしな」
はあ、とレーヴェは溜息をつく。
我が先祖ながら、投げやりにしてても、レーヴェはとても美しい。
フェリスは自分の貌を鏡で見ても全く何の感動も覚えないが、
レーヴェの貌については、子供の頃から、いつも、凄く綺麗だなあ、と思っている。
図に乗るから、レーヴェ本人には言わないだけで。
「……レティシアに優しくされて、ちょっと僕が図に乗ってるのは、認めます……」
「わかってるなら、よろしい。おまえはオレの血が強いし、おまえの最愛となると、いろいろあの娘の身体に影響でるかも知れないから、可愛がるのはいいけど、レティシアには負担かからないようにするように」
「はい……」
素直に、フェリスはレーヴェの言葉に頷く。
いままで強く誰かに心を動かしたことがないので、フェリスが強く思いをかけることで、レティシアの身に何か影響があるのだろうか、と少し怖い。
傷が治りやすくなるとか、いいことならいいんだけど……。
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