第180話 おうちでのんびり

「フェリス様。お待ち申し上げておりました」


「お帰りなさいませ、フェリス様。此度は、我らが花嫁様と共に御戻り頂けるとお伺いして、我ら一同、首を長くしてお待ちしておりました」


フェリス様に降ろしてもらって、ちゃんと自分の足で床を踏んで、邸内に入ると、ずらりと並んだ人々が出迎えてくれた。


我らが花嫁様。


そうかあ。

御領主様の花嫁になるんだから、レティシア、こちらの花嫁でもあるのかあ……。


こ、こちらのことも勉強しなければ……!!


「ただいま、皆。こちらが、サリアからいらした、僕の妃になるレティシア姫だ。

僕が、この世の何よりも大切にしたいと思っている姫だから、皆もそのように遇しておくれ」


…………?


フェリス様のレティシアの紹介、だんだん大袈裟になってない? 気のせい?

ここは王宮じゃなくて、ご領地だから、もう人心を欺く必要もないのでは……? 


遠くから来たレティシアのこと大事にしてあげてね、て言って下さるのは、凄く有難くて嬉しいんだけど、そんなに盛りまくって下さらなくてもいいような……。


「初めまして。どうぞよろしくお願いします」


フェリスの言葉で集まったたくさんの視線を受けつつ、レティシアは優雅にお辞儀をして、にこっと微笑ってみる。


ディアナだと『フェリス王弟殿下の噂の花嫁』として、微笑うと可愛いとか言って貰えるから、幸せなの。


気味が悪い姫とかサリアで言われた心に染みるよ。

ぐすん。


「ようこそ、いらして下さいました。レティシア様」

「私共はようやく、フェリス様の奥方、我らの女主人をお迎えする夢が叶いました」


やはり、ここでも、皆に幸福そうな笑顔で迎えて貰える。


「お若い花嫁様の御姿に、フェリス様がこちらの領主に就任された頃を思い出します」


「そうなのですか?」


 え? とフェリス様を見上げてしまう。


「うん。ちょうどレティシアくらいの頃に、僕、ここの領主になったから」


「そんなにお若い領主様?」


「母を亡くして王宮にいるのも目障りなほどうっとおしく暗かった僕に、父が……」


フェリス様が説明しながら苦笑している。


「十二年前でございます。思いがけず、私共は大変に若く聡明な御領主様を頂きまして、そのときから、きっとディアナで一番幸福な領民となりました」

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