第169話 転生王女のはるか遠い故郷の話

「レティシアもレーヴェ好きだよね。……僕より安心する?」


「いえ、私はどちらかというと、フェリス様に似てるから、竜王陛下が好きなので……」


これは内緒だったんだけど、フェリス様が謎の拗ね方してるので、申告しておこう。


「………僕に、似てるから? レーヴェに僕が似てるからじゃなくて?」


「はい。私はディアナの民ではないので、もともとの竜王陛下信仰がなくて……、フェリス様の御先祖様、フェリス様と似てて慕わしいなあって……」


あれ?

なんか変かな?

フェリス様固まってるけど……。


「竜王陛下ご自身も好きです。困ったときにお話聞いて貰えるっていうか……、竜神様なせいか、なんだか日本の神社の神様みたいっていうか……、あんまり厳格そうじゃないところとか……」


「……ニホン? ジンジャ?」


「あ! えっとえっと……、以前、お話した本の中の国の名前です。神社は神殿のことです」


「ああ。レティシア、そのレティシアの大事な本、僕が探してみようか?」


「……!! ありがとうございます。でも、タイトルも、作者も覚えてないんです。大好きだったことしか……」


嘘ついてごめんなさい!  もともと、この世界のどこにもない本なのです!


ここじゃない世界に、日本て島国はあるんですけど。


その島国に、神社もいっぱいあるんですけど。

コンビニより神社がたくさんあって、どんな神様も大切に敬うけど、宗教心は薄いかもという、謎の国なんですけど。


異世界旅行ができるものなら、フェリス様に御案内したいですけど。


「本当に? 探してみるよ。レティシアが、その本の話するとき、とても懐かしそうな、優しい表情するから」


「もう読めないと、いいことばかり思い出すんです……」


たまに、おでん食べたくなる。おでんとか、肉じゃがとか。

あ、肉じゃがっぽい、煮込み料理はこっちにもあるんだけど。


他愛ないもの食べたくなる。


家族は失ってしまってたから、向こうに残してきて、泣かした人はいないけど。


いろんな、他愛ない普通の暮らし、故郷の習慣を思い出して、似たようなことをしてみたくなる。


いまの暮らしがダメとかじゃなくて。

そんなにいい暮らしはしてなかったけど、ただ切なく愛おしく懐かしくて。


大変さは、いまも昔もそれなりにどっちも大変かな? 人生は。


でも、いま、嘘をついてるレティシアの為に、この世の何処にも存在しない、架空の本を探してくれようとする、この神様と同じ貌をした優しい王子様を守ってあげたい。


「ああ、そうかも知れないね。もとの実際の本より、記憶の中で、自分好みに書き替えてしまう……」


「ね。あ、あと、私ね、竜王陛下の話されてるときの、フェリス様、自然な感じで好きなんです」


「僕?」


「はい。レーヴェが……、て話すときのフェリス様は、仲のいいお友達か兄弟の話してるみたいで、なんか無理してないって言うか……」


「ああ……」


やっぱりお貌が似てるから、御本人も慕わしいのかなあ。

だって、陛下やルーファス王太子はいい方々だけど、外見はフェリス様とは、家族感ゼロだものね……。


幼いころ、家族の誰とも似てない、独りぼっちのフェリス様が、どんな気持ちで、瓜二つの神様の絵姿を見上げてたかと思うと……。


もう、余計に、竜王陛下、大事にしたくなっちゃう!  

あったら、いいお線香焚きまくっちゃう!(ここにはないけど!)


竜王陛下、フェリス様の心を守ってくれてありがとうなの!!


「フェリス様?」


「ありがとう、レティシア。陛下や、ちいさなルーファスにまで心配かけて、やっぱり僕が義母上に逢ってご機嫌を……とれた記憶が人生で一度もないけど、皆に迷惑かけぬよう、何とかしないと……と気鬱だったんだけど、レティシアのおかげで凄く元気でた」


フェリスの額とレティシアの額がくっつく。


あ。ホントだ。

フェリス様の瞳の碧が、明るい碧だ。

レティシアの金髪に触れる手の気配もすごく優しい。


なんか凄いフェリス様、距離近い、と思ったけど、近くにいるほうが、元気になるのかな?


「そうですか? 日本の神社の話よかったですか?」


「レティシアがレーヴェ好きな理由が、レーヴェが僕に似てるからって聞けたから」


「………?」


それはレティシアとしてはとっても当然な気がするけど、フェリス様の元気がでたなら、よかった!


ああ、いつか、日本の八百万の神様の話とか、フェリス様にしてみたいな。

興味持って聞いてくれそう……。


フェリス様も竜神様の子孫なんだから、レティシアは異世界から転生して参りました。てお話しても、そんなに気にされないのかなあ……?

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