第158話 竜王陛下と話すのが好きな姫君

「フェリス様、お目覚めですか? 女官たちから朝の御仕度のお尋ねが来てますが、レティシア様もこちらにおいでですか?」


ノックの音と、レイの声。


「は、はい! レティシア、ここにおります!」


わーん。

邸内だけど、朝帰りの常習犯になってしまった。


「大丈夫だよ。昨夜は、サキに、レティシアはこちらで寝かせるから、てメッセージ送っておいたよ」


「ホントですか? それなら、よかった……」


朝起こしにきてくれて、いない!! と心配かけてたら、申し訳ないので。


「フェリス様と、お部屋がもっと近かったらいいのになあて思いながら、

昨夜、夜の廊下歩いてたんですけど……」

「………、………」

「そんなこと思うくらい、フェリス様と仲良くなれて嬉しいなーて」


嫁いできたレティシアが私を嫌ったら、部屋が遠いほうがいいかと……と言ってたフェリス様。


レティシアも、似たような後ろ向きな心配はしてた。


「あと、廊下で竜王陛下とお話しするのもお気に入りです」

「レーヴェ、きっと喜んでるよ。レティシア、すっかりうちの子になって、て」


不思議。

竜王陛下のお話するときのフェリス様って、お義母様やお兄様のお話するときより、

ずっと気安そう…。まるでよく知ってる仲のいいお友達の話でもしてるみたい……。


「そうかも知れません。すっかり竜王陛下のうちの子気分なので、竜王陛下の

絵が燃やされそうになったのは、凄く嫌でした……思わず、おうち帰って来て、

私のお気に入りのタペストリーの竜王陛下の無事を確かめました」


「レティシア、そんなにレーヴェを甘やかさなくていいから……」

「え? フェリス様、何か仰いました?」


「御二人とも。仲がよろしいのは結構ですが、そろそろ起きてお支度なさいませんと……、レティシア様、女官方が、レティシア様が、初めて陛下に御目文字するドレスを選ばなくては、と朝から大騒ぎしておりましたよ」


こほん、とレイが控えめに咳払いしている。


「……ホントだ! 頑張って御仕度しなきゃ! ……フェリス様、陛下にお会いするのに、気をつけたほうがよいことは何かありますか?」


「いや、何も。いつものままの可愛いレティシアで大丈夫だよ」


フェリス様、身贔屓の引き倒し……うう、それではまったく参考になりません。


「レイ。フェリス様は御優しいからこう仰るけど、私、何か不作法があっては……」


「ご心配には及びません、レティシア様。先日の王太后様の御茶会ほど、余計な気を遣わずとも大丈夫です。陛下は公正な御方です。女官方と楽しく、レティシア様らしい、可愛いらしいドレスを選ばれてください」


「部屋まで送ろう、レティシア。僕が引き止めてごめんね。……そんなに早い時間のお約束ではないから、ゆっくり支度したらいいよ」


「はい、フェリス様」


フェリス様から、大丈夫、と髪を撫でられる。

うう、でも、やはり、緊張はする……。

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