第151話 病める時も、健やかなる時も
「……? レティシア、このバスケット重かったんじゃない?」
膝に乗せてるレティシアの背中を支えながら、ぎゅうぎゅうに詰まってるお夜食バスケットの中身に気づいて、フェリスが心配している。
「竜王陛下のタペストリーのとこまでは少し重かったんですけど、竜王陛下とお話してからはとっても軽くなりました! どうしてでしょう?」
「レーヴェ……。レティシア、レーヴェと何かお話してたの?」
フェリスが少し微笑する。
「フェリス様の謹慎が解けますようにって! もう叶いました! 竜王陛下ありがとうございますー!」
きゃっきゃっと、レティシアは、フェリスの膝に乗ってることも忘れて、はしゃぐ。
危うく膝から落ちかけて、落っこちないで、とフェリスに抱き寄せられる。
「それから、フェリス様と海に行って楽しかった話。また一緒に行きたいですって」
「うん。また一緒に行こうね。今度はもう少し、うまく作るよ、お城」
眩しそうにレティシアを見下ろして、フェリスは言った。
「砂が髪に入ってますよーって帰ってきたら、リタとサキに、お風呂でわしゃわしゃ洗われました。お外で遊んだの、とっても、……とーっても、久しぶりでした」
何なら、最後にレティシアが外遊びしたのは、お父様とお母様がご病気になる前かも知れない。
それくらい、いつもの日常とか、他愛ない遊びとか、そういうものが、ぜんぶ、遠いものになってた。
ずっと長い間、泣いても泣いても泣いても癒えることのない哀しみだけがレティシアの傍らにあった。
「今朝、せっかく楽しかったのに、ごめ……」
また謝ろうとしたフェリスの薄い唇に、レティシアは指をかざす。
「わたしは、病めるときも健やかなときも。喜びのときも悲しみのときも。フェリス様と一緒にいるために、ここに来ました」
とはいえ、ホントは、逢った途端にこんな子供いらんて無視されたらどうしよう? それはそれで、御邸のすみっことかに、お飾りの妃として安住の地を約束して貰えればいいのかな? とか斜めに思いながら来たんだけど。
こんなにフェリス様を大事に思うとは、レティシアにも想定外。
だってフェリス様、推せるんだもん。
めちゃくちゃに。
妃だから、もあるんだけど、妃じゃなくても、きっとこっそり庇ってあげたくなるよ。
お貌も立ち姿も綺麗だけど、放っといたら、なんかいろいろ特殊能力過多なのに、
うっかり飢え死にしそうな、自分には無頓着なとこが、放っとけないよ。
「なので、大変なときは、フェリス様と一緒に頑張りたいです。……まだ、何も出来ませんが」
こないだひどいめにあったけど、やっぱり、よさげな御茶会には行かねば。(王太后様系以外で)
社交を!
決して得意ではないけど、社交をしなければ!
まだまだ小さすぎて、何もできないけど、一人でもお知り合いを増やして、問題が起きたときに、頼れる人など増やしていかねば。
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