第149話 かたちは変わっても、食べたら変わらない

「フェリス様、私、喜びで、お夜食バスケットを投げ飛ばしてしまいました」


暫し、高い位置で、フェリスにぎゅーっと抱き締められるのに任せていたのだが、

やはりそろそろお夜食バスケットの中身が心配になってきた。


「拾うよ」


いえ、降ろして頂ければ、レティシアが自分で拾いに、と思ったのだが、お夜食バスケットはフェリス様の魔力で拾われたらしく、自分でテーブルの上へと移動した。


フェリス様のお貌より高い位置から見下ろす世界は、いつもと違ってちょっと不思議。普段、ちっちゃいレティシアは、家具とか人とかいろんなものを見上げて暮らしてるので。


これっくらい背が高いと、何だかそれだけでも心が強くなれそう……(たぶん勘違い)


「フェリス様。……いろいろ、消耗されてますよね? 私はごはんもちゃんと食べたので、いつでも私から魔力補充してくださいね!」


前世のおばあちゃんが言ってた。

腹が減っては戦ができん!! て。大変なときほど、食事と睡眠!! て。


「僕からあげるならともかく、レティシアから奪ってどうするの」


碧い瞳がレティシアを見つめて苦笑している。


「ダメですか? 何かフェリス様のお役に立ちたくて……」


だって、とっても心地よかったんだけどな。こないだ、フェリス様が力を分けてくださったとき。弱った身体があったかくなるかんじ。


還す事も出来るなら、あげたいのに、レティシアからも。


「ダメ。そんなに心配なら、ちゃんと、レティシアの持ってきてくれたお夜食食べるから」


「つぶれてないといいのですが、サンドウィッチ……」


レティシアはどんなヴィジュアルになってても食べれるけど、フェリス様につぶれたものは……。


「? つぶれてても、食べたら、栄養は変わらないよ」


竜神様に生き写しの美貌の王子様が、大胆なことを言っている。


「……フェリス様らしくていいかんじです」


さすが、フェリス様。


チョコレートでも肉でも、熱量さえとれれば動ける、働ける、の思考な人だけある……。


(お菓子と主食は一緒にしちゃダメだけど!!)


「いまの、僕、何かダメだった?」


「ダメじゃないです。王子様なのに、サンドイッチつぶれてても食べて下さりそうなところが、とても好きです」


落としたものは下げて、別のものを、とは言わないところが、推せる。


「……? よくわからないけど、レティシアに好かれて何より……」


「フェリス様、降ろして下さい」


「……うん」


なんでちょっとフェリス様、残念そうなの!?

このままの姿勢じゃ、ごはん、食べられないから!

フェリス様より高い位置から見下ろせるのはちょっとは楽しいけど、ずっとこのままは不便だから!!

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