第121話 可愛いお店で可愛い女の子とデザートの夢

「美味しい!」


そんなに主張が強くない。上品な甘さって感じ。前世で雪は海外旅行したことなかったけど、行った人いわく、甘いものはこれでもかというほど甘い!! と聞いたけど、そんな激しい甘さではない。ラベンダーのリキュールならラベンダーのリキュール、木苺なら木苺の本来の味が前に出ているから、それ自体の甘さてかんじ。


「よかった」


向いで微笑んでるフェリス様が、アイスが美味しいせいか、いつもよりさらに輝いて見える。


可愛いお店で可愛い女のコとデザートとか食べたいよー、残業ばっかりもうやだよ、だいたい毎日こんなの何の為に誰の為にやってるの、てしょんぼりしてた前世の社畜時代の雪の夢を、アフタヌーンティに続いて、何も知らずに叶えてくれてありがとう、フェリス様。


可愛い女の子との部分は叶ってないけど、フェリス様はじゅうぶん可愛いくて綺麗だからいい……。


は……! 違った!  

デートだった! 

人生二度合わせて、初のデート!


「ラベンダーアイスは、レティシアの理想通りの味だった?」


ラベンダーにそれほど理想の味はイメージしてなくて、街を歩いてアイスを買う女の子というスタイルが夢だったのだと思う。レティシアが、あの本をサリアで読んでた当時(今もだけど)、王宮から一人で出かける想定がなかったので。


「こんな味です。フェリス様もひとくち召し上がってみて下さい」


嬉しくて仕方なくて、フェリス様にも食べさせたくて、銀のスプーンをフェリスの方に差し出してから、……いけない、この人、由緒正しい王子様だった! と焦る。で、でも、どうやって、これ戻そう。


「あ、すみませ、お行儀の悪いことを…」


さ、さりげなく、スプーンを戻そうと往生際の悪いことをしていたら、レティシアの気まずさを察したのか、フェリスが唇を開いて、レティシアの差し出したラベンダーアイスを食べてくれた。


わー!! フェリス様を餌付けしてしまった!!(まちがい)


「うん。美味しい」

「フェ、フェリス様、無理させてすみま……」

「いや、本当に美味しいと思っている、多幸感の伝わりにくい貌ですまない」


整いすぎてるせいか、笑ってないときのフェリス様のお顔には、少し緊張する。


「レティシアも食べるか?」

「は、はい」


それぞれのプレートの味が違うので、ならばこちらも味見させるべきだ、と思ったのか、フェリスが銀のスプーンで薔薇のアイスをすくって、レティシアに食べさせてくれる。ひな鳥に餌を食べさせるのに慣れない親鳥のような慎重な面持ちで。

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