第119話 ラベンダーのアイスについて

「ああ、ここだ。ラベンダーがあればいいんだが……」

「可愛いお店!」


アイスのお店は露店のお店ではなく、きちんとしたお店だった。店内のディスプレイが外から見えるが、可愛らしい造りで、カフェのように、店内に席があるようだ。


「こういう甘いものの店は多いよ、ディアナは。遅くまで飲んで、最後には甘味で終わりたくなるような甘党が多いから」

「そういう意味では、甘いものをご飯にしちゃうフェリス様は、とてもディアナ人なのですか?」

「いや? 僕は食に熱心ではないけど、ディアナ人はよく食べる人種だから。スイーツはスイーツ。食事は食事で別口だな」


フェリスが扉を開けてくれる。

そうだ! 

雪は前世でもデートなんてしたことないから、これ、人生初デートかも!

(現在、もうすぐ結婚式予定の五歳児だけど……)

なんて可愛いお店! さすがにテンションあがるー!


「いらっしゃいませ。……まあ、フェリス様。どうなさいました? 珍しく可愛いらしい方をお連れで……」


フェリス様、やっぱり髪の色と眼鏡くらいじゃ、変装、ばればれみたいです……。

と言うか、お馴染みのお店だったのですね……。


「私の妃が、ラベンダーのアイスを食べたいと言うのだが…、ここにあるだろうか?」

「まあ、こちらがお噂の……。ラベンダーは普段はお出ししてはおりませんが、

御祝いに御作りしてみましょうか?」

「作って貰ってみる?」

「はい!」


わああああ、ラベンダーアイス、本当に食べられる!

あったらいいな、と思ってたけど、無理かな~ないかな~、なくてもフェリス様が一緒に探してくれるだけでも嬉しいな~と思ってた。


「苺や桃やキャラメルは?」

「う。それも美味しそうです……」


誘惑。ラベンダーも食べたいけど、苺も……キャラメルも……。


「盛り合わせでお作りしますよ。お好きなフレーバーをいくつかお申し付けください」

「本当に!?」

「はい。どうぞ、お席のほうへ」


 テーブルセットのあるほうへ、向かう。幸い、お客さんのいない時間帯みたい。

おかげで、人目を気にしなくていいのも嬉しい。


 そうだよね。朝からそんなにみんなアイス食べに来ないよね。

 きっと午後三時とかが多いんだろうね。


「こちらからお選びください」


 渡されたメニューにアイスのフレーバーがたくさん並んでる。

 ……悩む。


「紅茶アイスとかも美味しそう……」

「凄く真面目に悩んでるね」

「はい! 真剣です! 種類が多すぎて迷ってしまって……ちょっとずつたくさんいれて貰おうかな……」

「うん。いろんな味が試せたほうがいいのでは?」

「フェリス様は? 何にされます?」

「僕はお任せで。レティシアが選んでくれてもいいよ」

「……余計に目移りしてしまいます!!」


メニューを読み込みながら、あれもこれも気になる~と困っているレティシアを眺めて、フェリスはひどく楽しそうだった。

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