第114話 王弟殿下からの、魅惑のお誘い

「レティシア、今日、お忍びで街に行こうか?」

「街? ですか?」


朝食のお茶はマンゴーティ。

グラスで貰ったマンゴーのジュースも、甘くて美味しい。


そしてもりもり春野菜のサラダを食べる。

昨日、かりかりしたから、たくさん野菜を補充しなければ。

お肉ばかり食べてると好戦的になるよー。

そしてフェリス様もちゃんと食べてるかこっそりチェックするよー。


「うん。レティシアにディアナの街を見せたいな、と思って」

「フェリス様と一緒に?」


それは嬉しいけど、そんなお時間あるのかな?

レティシアと違って、忙しいのでは……。


「うん。昨日のお詫びもかねて」

「嬉しいですけど、フェリス様、そんな気を遣って頂くようなことは何も」


王太后様、怒ってるかなあ……。

側妃は選ばないけど、御茶会では失礼いたしました、て御詫び状でも書こうかな……。


なんと無礼な嫁だ、て言われて、またフェリス様が嫌な思いしてもいけない……。


「いや、僕がレティシアと出かけたいだけだから。……レティシアは?」

「私も……、一緒に、お出かけしたいです」


お外にお出かけ!

しかも公式行事ではなく!

なく!!


だいたい王族のお外にお出かけって、いつも馬車の中から、笑ってお手振りなの……。


沿道にたくさん並んでくれてる人達に、笑って手を振るのがお仕事。

もちろん、みんな並ぶのすごく大変なのに、待っててくれて嬉しいんだけど。


でも、普通の人みたいに、街を歩いたりする機会はないから……。

式典の時じゃない、沿道に警備兵の並んでない、普段の街てどんななのかな?と思う。


「僕達の結婚式のときも馬車で巡るけど、その前に、普段のディアナを見せたいな、と」


ときどき、不思議。

フェリス様とレティシアは何も似てないのに、

どうしてフェリス様にはレティシアの思ってることがわかるんだろう? て思うときがある。


僕達はよく似てる、て、フェリス様は最初に逢った時に言ったけど。

わたしたち、似てる……?(いやいや何も似てない)


「ディアナの街には竜王陛下の絵姿だらけ、てお聞きしました。フェリス様、お忍び、可能ですか?」


レティシアはともかく、フェリス様、すぐバレてしまうのでは……。


「眼鏡をかけておくよ」

「………!?」


それで何とかなるもの!? と謎だけど、行ってみたい。

ちょっとでいいから、特別な式典のときじゃない街に行ってみたい。




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