第70話 偉大な魔法使いを目指して


フェリス様を守護してる、優しい水の精霊さんとかなのかなー。アニメとかゲームなら、水色の髪で、ちょっとフェミニンなかんじのキャラだよねー。


「そういう無自覚な力も、きちんと魔法を学ぶと、自分の思うとおりに使えるようになりますぞ、レティシア姫」


「ホントですか? じゃあフェリス様の守護霊様とも話せるようになりますか?」


 いやオレとはいつでも話せるんだけどね、フェリスから姫にちょっかい出すなて言われてるだけで、…しかもマーロウよ、なんかちびちゃんに微妙に誤解させとるぞ…、とレーヴェが聞いてたら大笑いしそうだ。


「左様。姫の中にある力を、うまく操れるようになれば、この世界がまた違った顔を見せますぞ」


「私にも、何か出来るようになると嬉しいです!」


いまのところ、レティシアは、何もできないので。


手に職をつけると、もし、フェリス様との婚約が破綻したりしても、サリアに帰れなくても、何処かで一人で生きていけるのでは…。


いえ、決して、フェリス様を疑うとかじゃないけど。

お互い、恋しあっての結婚でもないから、あんなにイケメンのフェリス様がいつか運命の恋の相手に出逢うかもしれないし。


そしたら、いっぱいお世話になってるフェリス様に、後顧の憂いなく、御自分の人生を選んで頂けるように、さまざまな修練を積んでおかねば!! 


推しの足手纏いになるようでは、信者の風上にもおけない!!


「女の子の騎士はなかなか難しいですか、魔法使いは体力差は関係なさそうですね?」


そもそも女騎士になれるほど、前世も今世も、我が身に運動能力を感じない。


フェリス様が暴漢に襲われたときに守ってあげられるくらいだと、とってもかっこいいんだけど…、戦闘方面にはまったく才能感じない。


「ほう。姫は職業をもつ婦人に憧れておるのかね?」


「はい。手に職をつけられたら、よいかと」


「ディアナの未来の王弟妃殿下に、手に職は要らぬと思うがの?」


マーロウ先生が、楽しそうにくすくす笑ってる。


「でも、マーロウ先生、人生、何が起こるかわかりません。きょう、王弟殿下の妃でも、明日の私は、街でおだんごを売る娘かもしれません。 やはり、自分に何かできることがあったほうが、心強くいられます」


だって、こないだまで、サリアの父様と母様の自慢の幸せな王女だったけど、あっというまに、親を亡くしたやっかいものの王女になって、さらにディアナの王弟殿下の妃になったよ。


意外にも、王弟殿下のフェリス様、とってもいい人だったけど。そのさきに、落とし穴がないとは、誰にも保障できない。


未来なんて、誰にも、保証できない。


「なるほど。これはフェリス殿下も退屈せんのう…。では、姫君、未来の偉大な魔女をめざして、まず手始めに、魔力でちいさな水球か、火球、どっちか作ってみるかね?」


「はい、先生!」


レティシアの覚悟を、ちっとも本気にしてないマーロウ先生は、にこにこしながら、魔術の初歩の教本を広げた。

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