第69話 生まれつきの魔力について

レティシアもお父様が亡くなられた後に、触れさせて頂けなくなった書架があって、悲しかったな……。


世の中、腑に落ちない理不尽なことは、いっぱいある……。


元いた日本にも、異世界にも。


「たとえば、砂漠に雨を降らすような魔法は、かなり高度な魔法になるので、誰にでも出来る訳ではない。それができるものが、魔術師や、魔導士と呼ばれる」


「魔法を仕事になさる方は、この世界のどこでも、お仕事に困ることがなさそうですね」


サリアでは、魔術師は少なかったので、厚遇を受けていた。


「そう言えんことはないが…。だいたいは変わり者が多いな。苦労して魔法を学ぶ者もいれば、生まれつきの魔力を持て余して、制御を覚えん事にはとてもまともに暮らしていけない者もいる」


「生まれつきの魔力……」


「そう。わしが思うに、レティシア姫もとても潜在魔力が高いよ」


「わたし、ですか?」


生まれつきの魔力!

そんなの高かったら素敵だけど、昔から霊感とかあった試しないんだけど!


日本でも両親を早くに亡くしたので、霊感があったら、お父さんやお母さんとお話できるのにね、て二人の写真に話しながら、いっぱい泣いた。


「でも、わたし、ぜんぜん魔法的な力とか感じたことないですが……あ!」


「何じゃね?」


「唯一、不思議なことといえば、こちらに来てから、ときどき、凄くいい男の人の声が聞こえます」


「どんなときに?」


「最初は、竜王陛下のタペストリーの前にいたときに……、」


「どんなことを言ってるんだい?」


「おもにフェリス様のことを心配してるのかな……、という感じのことを」


「ディアナの精霊が、王弟殿下の若き妃に興味を示して、レティシア姫に話しかけておるんじゃろうかの?」


「精霊」


フェリス様の宮に来てから、あの声聞こえるようになったから、フェリス様を守ってる精霊さんなのかなー。


「レティシア姫から悪いものの気配は何も感じぬから、よき精霊の類いだとは思うのじゃが」


「はい。私も悪いものは何も感じません。なんて言うか……どちらかと言うと、どこか守られてるような……、不安になるんじゃなくて、安心するような声なんです」


「うむ。ディアナのよい精霊がフェリス様の花嫁を歓迎しておるのじゃと」


「だったら、嬉しいです」


うん。

ぜんぜん怖い気配じゃないんだけど、マーロウ先生に、きっといい精霊だって言ってもらうと、なんか安心したー!!


御伽噺で、子供が生まれたときに、精霊が祝いにきて祝福を授けてくれる、て、よくあるけど、それの結婚式版なのかなー?


悪しき気配や、害意は、何も感じない。

その声が聞こえるときは、いつも、とっても優しい気配を感じる……。

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