第67話 世界を構成する四つの元素について
「この世界のすべては、四つの元素から成り立っておる。レティシア姫、この四つの元素が、何かわかるかね?」
にこにことマーロウ先生が問う。
「え…と、水と炎と…、土と、風?」
ここに第五のエレメントが足りない、とかよく本とかゲームではあるのよ。
第五のエレメントが何だったかは忘れたけど。
「左様。本日の生徒は優秀じゃ」
よしよし、と褒めて下さる。先生、優しい。
「風、火、水、土。 世界はこれらの要素によって始まり、これらの要素によって構成される。たとえば姫が立っている大地、これは土属性だ。土は全てを育む。時に隠す。死したものを分解し、再構成する。農作物や、木の葉、虫、獣、人に至るまで。 それゆえ、自然界で生まれたすべてのものは、土に還っていく。土に還ることの叶わぬものは、自然なものではなく、異質なものとされる」
「異質なもの…」
「なかなか人の手では、何千年も土に還らぬもの、というのは、いまのところ、作りがたいがね」
「お母さまから、魔法学というのは、あまりにも赤子のような人間が、この世界や、神様のことを、少しでも知りたくて始まった学問、とお聞きしました」
だから、何処の国であろうと、世界中の神殿や魔法の塔は、高く高く天へと聳え、神様に近づこうとするのだと。
でもまるで叶わぬ恋のように、人が神様や世界の秘密に近づこうとすればするほど、遠ざかるのだと。
「そうだよ。姫の母君の言葉は正しい。魔法学も神学も同じ。人間がこの世界や神様のことを知りたくて始めた学問だよ。だが世界のことなど、生まれたばかりの赤子のような人間に全て知りえるはずもない。神様を理解しようとするなど、レーヴェ様を理解しようとするようなものだ」
「竜王陛下は、難解な方ですか?」
レーヴェは我儘、と言ったフェリス様の美しい貌を思い出す。
言葉の内容より、なんだか我儘な友人に、手を焼いてるみたいなフェリス様の様子がおかしかった。
「太古の、竜王陛下自身のお言葉を書き留めた書物によると、陛下は大変、単純で好みのわかりやすい御方なのだそうだが、神ならぬ人間の身には、陛下の御心は測りがたいね」
「このディアナは、レーヴェ竜王陛下の守護のもとにある地だ」
「はい」
「レーヴェ様は、水を司る水竜。故に、ディアナの者は水の属性の者が多い」
「人間にも、属性があるのですか?」
「もちろんだよ。姫もまた、いまの名を持つ以前、この世界に生まれる以前から、水に属していた筈だよ」
「私も?」
「水竜の王の血脈を継ぐ一族の花嫁に、いかなる縁を結ぼうとしても火の娘は来られない。火は水に戻されてしまうから。レティシア姫もまた、水の属性を持つからこそ、ここにいるのだよ」
「水の属性……」
水の属性なんて、あるのかなあ?
せいぜい、レティシアは、前世で二月生まれで、魚座だったくらいしか……。
ああ。
生まれた国である日本は、その世界では有数の、水の綺麗な国だったけど……。
蛇口を捻った水道の水が、そのまま安心して美味しく飲める国なんて、この世界に、そんなにいくつもないんだよ、て優しいおばあちゃんに教えられて育った。
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