第63話 好きか嫌いかで言うならば
ふわふわのオムレツと、ソーセージ。
卵料理にわくわくしつつ、レティシアは、フェリス様の手元もチェック。
基本、食事に熱心じゃない、て言ってたから、ちゃんと食べてるかなーと確認。
フェリス様はサラダをつついていてた。
うん。ちゃんと栄養を摂取してらっしゃる。大丈夫。
「あの。フェリス様」
「うん?」
「私はフェリス様と竜王陛下が似てらっしゃるので、竜王陛下もより慕わしく思うのですが、もしかして、フェリス様、竜王陛下に似てらっしゃるの、お嫌なんでしょうか?」
神話で語られるようなご先祖にそっくりだったら、私なら嬉しいと思うけど、それはただの想像の話で、実際にそっくりなフェリス様はいろいろとご苦労があるのかも。
「………? 何故そう思うの?」
「あの、フェリス様が、竜王陛下に似てるせいで、祟りつきって怖がられたりするって…」
「ああ。それは、どっちかっていうと便利なくらいだけど……」
どうして怖がられて便利なんですか。前世でドラマで見た、戦場でお面被ってた中国の王様とかみたいに、男の人でも、美貌すぎると舐められて困ることとかあるのかなあ……。
「うん…と、ね」
金髪を掻き揚げながら、フェリス様は笑った。
えええええ、フェリス様って、そんな顔もできるんですか!?
て言いたくなる、とびきり可愛いらしい、はにかみ微笑。
「レーヴェに似てるのが、嫌か嬉しいかって言われたら、………嬉しいよ」
「何故、そんなに間が」
しかも、何故、そんなに小さい声で。
顔も、赤くなってらっしゃる。
か、可愛い。
めちゃくちゃ可愛いんですが……。
「何と言うか、……聞いてたら図に乗りそうで面倒……だから…、恥ずかしくて」
んんん?
恥ずかしくて、の前の部分が、小さい声過ぎて、聞こえない?
すーんごい照れ屋さんなのかな、フェリス様?
遠いご先祖に似てることを、こんなにまで恥ずかしがるなんて?
まあ、お父さんやおじーちゃんに似てるの照れる男の子みたいなもの?
「これでも僕も、ディアナの男だから、レーヴェに……、神話の竜王陛下に似てるのは、嬉しいよ」
まるで、親しい友達に、内緒話をするような、密やかな声。
よかった。
実はフェリス様が竜王陛下に似てるの嫌とかなら、それは、竜王陛下の絵、飾れないと思ったの。これで、安心して、堂々と飾れるー!
「フェリス様も、竜王陛下が大好きなんですね」
「………」
無言で赤面するフェリス様が、永久保存したいくらい、可愛いー!
「レーヴェに似てることは、いろいろと面倒も引き起こすけど、レーヴェの影が、僕を守ってもくれている。ただ……」
「ただ……?」
「義母上に嫌われるのは子供の頃から慣れてるからいいんだが、皆がいろいろと勝手な噂をすることが、兄上の心の余計な負担になってはいないかと、案じている。だから、僕がレーヴェに似てて嬉しいなんて話は、レティシアにしかしないよ。……できないんだ」
そうだった。うっかり、フェリス様が竜王陛下似の御姿を利用して、王位狙ってるとか、言われてもいけない。ディアナでの竜王陛下の人気を考えると、それってかなり冗談にならない。
高位の王族って、何気に、いつでも足場の危ういとこにいる。
レティシアの歳でさえも、王女殿下を傀儡として立とうという勢力あり、て言われたもの。
「心得ました。殿下。大変立ち入ったことを伺いました。忘れて下さい。いまのお話は、男同士の秘密です」
人差し指を、唇の前で立てる。これがディアナでも通じるか謎だけど。
「…男なのか? 僕の花嫁は?」
フェリス様が、きょとんとしている。
「かたい秘密の心意気として!」
フェリス様が笑ってくれて、レティシアもえへへと笑った。
でも、そうかー。なるほど、これって、意外と笑えない話になっちゃうんだと、自分の頭で納得するとともに、レーヴェに似てるのは嬉しいよ、と恥ずかしそうに笑った時の、可愛いらしいフェリス様の顔を、ずっとこっそり覚えておこうと思った。
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