第42話 竜王陛下の代理人
「フェリス様と、タペストリーに描かれた竜王陛下が似てるのに、私がとても驚いてたら、フェリス様、僕はこんなに我儘じゃないよ、と笑っておいででした」
「フェリス様は成長するに従って、竜王陛下にどんどん似てこられたからね。
そう言われることが増えて、王弟殿下御本人も戸惑って、レーヴェは神で、僕は地べたを這う、哀れな人の子だ。似てる筈なんかないのにな、とやさぐれていたよ」
「フェリス様のほうが少し憂いを帯びてらして、竜王陛下のほうが、なんだか、明るい方なのかなと…」
朝見たタペストリーでも。レーヴェ様、血塗れの戦場のなかにいても、へこたれないで、笑顔を見せるような神様だったんだなーと。
「この世の誰も、レーヴェ様を制限できないからね。昔々には、レーヴェ様を神殿に捕らえて、その力を得ようとした他国の者もいたそうだけど、篭められた神殿ごと破壊するような御方だから…」
「神様を生け捕り……大胆にして、無礼過ぎる」
ぽかん、と、レティシアは口を開けた。
「全くね。昔も今も、人間というのは、この世界の中で、小さな存在なのに、神を敬わず、ただ神の名と、神の力のみを利用しようという悪しき者もいる。神の力というのは、人が使役するようなものではない」
「ディアナの方は、レーヴェ様を尊敬しながら、とても愛してらして微笑ましいです」
普段、ちっとも信仰のあつくなかった、日本人の雪も、車にひかれるときは、神様…! て思った。
生まれ変わって、レティシアになってる!! と気づいた時も、神様どうなってるの!? と思った。
それは、レーヴェ様やサリアの女神様みたいに、ちゃんと貌のある神様じゃないんだけど。
漠然と、名前も顔も知らない「神様」を、呼んでしまうのは、人の、何か本能的なものなのかなー。
「でも、神様に似てるって言われるのは、確かに、大変そう…」
まして、レーヴェ様みたいに、こんなに、現役で、愛されまくってる神様だと……。
「ディアナの神の代理人は国王陛下なのだよ」
「そうなのですか?」
神の代理人。
ということは、この場合は、レーヴェ様の代理人てこと?
「そう。男であれ女であれ、レーヴェ様の竜王剣を抜ける者、レーヴェ様に最も近しい御方が、ディアナの王になるのだよ」
「レーヴェ様にもっとも近しい御方が、ディアナの国王陛下」
レティシアは、ランス先生の言葉を繰り返してみる。
そういう風習の国で、やたらレーヴェ様に似たフェリス様が、お兄様の国王陛下にお仕えしてたら、何だか、ちょっと、変な絵面に見えるかも……?
顔が悪いから虐められるのかも、と笑ってたフェリス様の言葉が、違った意味で、現実感ありすぎる…。
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