第21話 風変わりな王弟殿下

「送って頂いてありがとうございます」


「どうぞ、御礼は無用に。レティシア様は、我が殿下の大切な方ですから」


 アフタヌーンティを終えて、王弟殿下の指示で、レイがレティシアを送ってくれた。


「フェリス様に、ふさわしい姫になれるよう、日夜精進致しますので、どうぞお力添えをお願いします」


殿下、予想を裏切って(失礼だな、我ながら)、とっても、いい方だったなー、おつきの人もいい人だなー、としみじみしつつ、お願いする。


望外の幸運なので、この滅多にない幸運を逃さないよう、努めたい。


「姫様、そんなに構える必要はございません。我が主のあんな楽しそうな御様子は久方ぶりに拝見しました。いまのままのレティシア様で、いらして下さい」


「そ、そうでしょうか…」


王弟殿下も、同じような趣旨のことを、お茶のときに言ってた気がするが、何というか、そのままでいい、というのに慣れない。


努力目標とか、攻略目標があったほうが、落ち着く。


あ。


せっかく生まれ変わってても、どうしても優等生からの社畜根性が消えない。


も、もう少し、ゆったり生きて、今世の幸せを求めなければ。


「はい。ディアナの習慣ですとか、我が主ならではの振る舞いなどは、必要に従ってお伝えしますが、本日の顔合わせをフェリス殿下は、ことのほか、楽しんでおいででした」


「嬉しいです。私も楽しかったです」


フェリス殿下の話になると、レティシアも、自然に笑顔になる。


フェリス様は、何というか、前世でも今世でも、いままで逢った、どんな人類とも違う感じ。


超絶、綺麗な顔の、テンポの独特な人というか…。


超、マイペース!!


もちろん、いままで逢ったこともないほど、美しい男の人ではあるんだけど。


そういうことではなくて。


なんだか、自由……。


僕が窓際王族で申し訳ないね、レティシア、て気を使って言ってらしたけど、ちっとも、そんなこと気にしてそうにも見えなかったし。


あの、若くして、なんだか、人生達観した感じは見習いたいなあ……。


「レティシア様、我が主は…その…少々変わっておりますが…」


王弟殿下命であろう随身のレイが、何か言いにくそうに言葉を選んでる。


「そこがいいと思います」


レティシアは、小さく、頷いた。


「フェリス殿下は、とても風変わりな、とても優しい方。お逢いして、大好きになりました。殿下に、恥ずかしい思いをさせぬよう、こちらの宮廷の作法を頑張って覚えたいと思ってます」


大好きは言い過ぎか? と思ったが、そこは五歳児の素直さで言い切った。


恋も愛も、このちびっこボディでは、ちっともぴんとこないけど。


いや。

転生前の二十七歳の娘のときも、ぴんとこなかった残念な娘なんだけど。


少なくとも。

あの風変わりな美しい王弟殿下が、これから、レティシアの新しい家族になるんだあ、と思うと、嬉しい。


いじめられやすいって言ってたから、レティシアが守ってあげなきゃ、と保護欲が湧いてくる程度には、嬉しい。


優しい兄か弟のように、慕わしい。


「レイ?」


「御意。レティシア様がこちらで嫌な思いをなさらぬよう、私も全力を尽くします」


何だろう?

レイ、凄い感じ入ってるような…。

やけに気迫感じるな。


レイ、突っ込み漫才のように、フェリス様の傍らでうるさく意見しつつも、フェリス様が大事で仕方ないって様子が見てとれるから、どんな花嫁が来るのか、そうとう心配してたのかな?




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