第20話 レティシアと小鳥

「あ…」


真っ白いテーブルクロスの上に、興味津々と言いたげに、可愛らしい小鳥が降り立った。小鳥的には、スコーンやサンドイッチのパン屑狙いだろうか?


「おや、小鳥が」


王弟殿下も、小鳥に気づく。


「も、申し訳ありません、殿下、姫様」


女官が慌てふためいている。


「いま追い払いますので」

「大丈夫。可愛い……」


あ。

可愛いはマズかったかな。

フェリス様が生き物苦手とか、潔癖症だったら…。


「きゃう…」


美味しいものある? と言いたげに、小鳥がレティシアを見つめている。


「フェリス様、何かあげてもいいですか?」


「いいよ。でも、この子、何が好きなんだろう?」


「パンのかけらとかかなと……」


 これじゃ君には大きいよね、とミニサンドイッチをさらにちぎってみる。


「レティシアは鳥が好き?」

「はい。鳥も好きです。犬や猫も。飼ったことないんですけど…」


 そうだ。

 今世では、生き物と暮らしたいなあ。

 前世のアパートではペット禁止だったけど、宮殿のお部屋は広いし。


「フェリス様は?」

「僕は……ん? 何だい? 祝いか?」


パン屑のお礼なのか、小鳥が、テーブルに飾られていた薔薇の花をくわえて、レティシアに捧げ、もう一輪、薔薇をくわえて、フェリスに捧げた。


「いい子だね。僕とレティシアが、初デートだから祝ってくれてるのか?」


よかった。

フェリス様は楽しそうに小鳥をかまってる。

生き物嫌いではないらしい。


「殿下。レティシア様。大変仲睦まじく微笑ましい光景ですが、その子だけならよいですが、どんどん小鳥が寄ってきたら、お茶が台無しになりますよ」


レイに窘められる。


「確かに。まあまあな惨劇になってしまう。お祝いありがとう。ほらおゆき」


指にとまらせていた鳥を王弟殿下が青空に返す。


まるで午睡の夢のような、平和で、幸せなひととき。

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