第2話 初めて、婿殿の顔を見る。
「おそれ、おお………」
なんて答えたらいいのかわからなくて、とりあえず
恐れ多いことでございます、と言おうと思って顔を上げて
生まれて初めて彼の顔を見て、レティシアは、ぽかんと、口をあけた。
「どうした、姫君?」
「あの……、おおていでんか? で…あられ…ますか?」
「ああ、私がフェリスだ」
婿君。
想像していた人と違う。
なんてお可哀想な姫様。
変わり者と噂の冷飯喰らいの王弟殿下のところへ…と言われ続けたせいか、
暗闇に沈む吸血鬼のような、おどろおどろしい婿君を想像していた。
「姫……?」
「フェリス様、あんまり…綺麗な方なので……驚いて…」
柔らかそうな金髪に、空を写したような青い瞳。
夢に出てきそうな王子様だ。
この人のほうがお姫様で、超大国との政略結婚に使われそうなくらいの美貌だ。
「そうか? 熊のような大男よりは、怖くはないか?」
「はい。いえ、あの、熊さんがいけないわけではないのですが……」
こんな綺麗な人の花嫁が、子供の自分で、かえって、なんとなく申し訳ない。
「姫も綺麗だぞ。とても」
「………」
ぶんぶんぶん、とレティシアは首を振る。
いや自分が超絶不細工とまでは言わないが、こんな美形ではまったくない。
ディアナの王族は、美貌の方が多いのだろうか……。
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