【5/1書籍③巻発売、コミカライズも進行中】五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました

あや5/1五歳で、竜3巻発売

第1話 王弟殿下のちいさな花嫁




「王弟殿下におかれましては、ご機嫌うるわしゅう……」


 なんと哀れな姫君。


 両親を失って、後ろ楯もなく、たった五歳で、十二歳も年上のディアナの王弟殿下の輿入れなどと……。


 憐みの声にも、同情の目配せにも、疲れてしまった。


 自分がそんなに可哀そうな姫なら、 そんなに哀れな姫を、妻に貰わなければならないお相手も、 とても気の毒だ。


 もちろん、お互いに、自分で選んだ結婚ではないけれど。

 でも、出来れば、追い返されたくない。


 変わり者と評判のこの方に、この縁談は迷惑だと言われたら、

 レティシアには、もう、帰るところがない。


「ああ、長旅で疲れたろう。どうか、わが花嫁よ。そんなに怖がらないでくれ」


 初めて聞いた花婿の声は、そんなに怖い声ではなかった。


 優しい声だった。


 ここに来るまでに、あまりよい噂を聞かされなかったせいか

 物凄く冷たい声や態度を想像していた。


「まあな。こんなに幼いのに、だいぶ年上のおじさんと結婚させられて、可哀想なんだが…」


 自らをおじさん扱いする花婿殿は、そうは言っても、十七歳だ。


 おじさんではない。


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