第5話 お尻派は邪道じゃないが?
5話 お尻派は邪道じゃないが?
「ね〜ね〜晴翔〜。昨日葵に告白してフラれたんだって〜?」
「っ……な、なんだよ。俺のこと笑う気か?」
「私がそんな性悪に見える? もぉ、慰めてあげようと思っただけじゃんかぁ」
ぐらっ、ぐらっ、と。椅子を後ろに傾かせながらそう絡んできたのは中月。葵の親友である。
一応彼女とは俺も面識があり、葵の他に唯一と言っていいほどちゃんと仲の良い女子の友人だ。
「顔がニヤついてるぞ。この高校デビュー性悪ヤンキーめ」
「ちょっ、当たり強いなぁ。お尻狂いのド変態陰キャ君め」
高校デビューと言ったのは、彼女の髪が変わったのは高校に上がる寸前の春休みの出来事だったからである。
まあ元々ギャルっぽいところはあったし、いつ髪を染めてもおかしくない感じではあったんだけども。中学が終わりようやく校則の縛りが無くなったことで、速攻美容院に行って今のような派手髪へのデビューを果たした。
元々の性格からもムカつくがよく似合っているため、高校から初めて関わる奴らにはむしろ黒髪に戻られた方が違和感があるくらいだろう。
「全くぅ。どうやったらあなたのお尻が好きですなんて酷い告白できるのさ」
「それ、大和にも同じこと言われた。やっぱり葵怒ってるよな……?」
「そりゃもう、ね。おこおこのプンプンだよ」
「だよなぁ。クッソ、マジでなんであんなこと言っちゃったんだぁ……」
「それは晴翔がド変態だからじゃん? ま、純粋におっぱいとかじゃなくてお尻ってのは流石に私もびっくりしたし」
「オイちょっと待て。その言い方はお尻派として看過できないぞ。何か? お尻派は邪道だと、お前はそう言いたいのか?」
「あはー、そこで噛みついてくるのはド変態過ぎるよぉ」
そんなことを言われても。お尻をこよなく愛する者として、おっぱいとの差別化をする発言を見過ごすことなんてできるはずもない。
おっぱい派とお尻派は古来から争いを続けている二代派閥。いわばたけのこなアレときのこなアレと同じ。自分の属する派閥が見下されるようなことがあれば、声をあげて抗議する義務があるのだ。
「ま、それは一旦置いておいて。どうするの? 仲直り、したいんでしょ?」
「……それは、まあ」
「ならやっぱり謝るのが一番手っ取り早いよ。そしてできることなら告白をやり直すべき。葵を好きだって気持ちは本物なんでしょ」
「あ、あぁ。勿論そのつもりだよ」
俺は葵のことが好きだ。それに間違いはないはず。普通顔とか性格から人を好きになることが多いが、俺の場合それがお尻だったというだけ。この好きに嘘はない。例え周りと違ったとしても。
「なら早速今日、一緒に帰ってその時に謝っちゃなね。私もそうできるようサポートしたげるから」
「ほ、本当か!?」
「もちもちのもちだよ〜。ま、なんやかんや言って晴翔とも腐れ縁だし。ジュース三本で手を打ってあげる」
「う゛っ……お前、そういうところほんとちゃっかりしてるよな」
「なんとでも言いなさいな。ど〜せ晴翔が頼れるのなんて私と大和くらいしかいないんだから」
「……喜んで、買わせていただきます」
「素直でよろしい〜」
ムカつくが、正直頭が上がらない。
俺が頼れるのは大和とコイツのみ。それは本当のことで、しかも葵に真正面から接触できる人物ともなればいよいよ本当に中月に頼るしかなくなる。コイツ自身もそれを分かっていての交渉のはずだ。
(こういうところがいけ好かないんだよなぁ……)
だが背に腹は変えられない。ここは大人しく要求を飲むとしよう。
葵との関係修復には間違いなく、コイツの力が必要だ。
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