第4話 自己紹介と鋭い眼光

4話 自己紹介と鋭い眼光



「え〜、これからこのクラスの担任を務めます。相浦沙織です。初めての高校生活でみなさん分からないことも多いかと思いますが、担任として一年間精一杯フォローさせてもらいますので。よろしくお願いします」


 クラスが拍手で包まれる。


 昨日に入学式を終え、今日からはいよいよ一学期が始まる。それに伴いクラス分けで計八クラスに別れた俺たちは、各クラスで担任の先生の挨拶を受けることとなった。

 

 ちなみに俺と大和、葵と中月は偶然にも全員同じクラス、一年四組である。


「じゃあ私からの挨拶はこれで終わり。ここからはこれから一年を共にしていくクラスメイトに向けて、一人一人自己紹介をしてもらおうかな」


 相浦先生はおおらかな笑顔でそう言うと、まずあいうえお順の席で並んでいる俺たちの一番右前の人を指名し、出席番号一番、二番と進んでいくように自己紹介を求める。


 なんともまあ一学期らしい流れだ。大和はこういう時赤坂という名字のせいでほとんど一番目を任されてしまうから可哀想だな。そういえば中学の卒業式でも唯一一番最初だからと卒業証書の全文を校長先生から読み上げられていたっけ。


「え〜っ、と。赤松大和です。小中とずっとサッカーをやってて、高校でも一応サッカー部に入る気です。なので同じ人は仲良くしてくれると嬉しいです。これから一年間、よろしくお願いします」


 そしてやはりこういうことに慣れているからか。一番槍としての役割が上手い。


 自己紹介をどのようにするか細かく指示は受けていないから、基本的にはみんな一番目の人がしたのを真似ていくことになるだろう。


 それを分かっていての小中の部活の話と、これからどの部に入ろうとしているかの話。これなら真似やすいし、帰宅部だとしてもそれはそれでとりあえず真似ることだけはできる。簡潔に済ませてかつ、初めて話す人とも話題作りをできるお題をこうやって挟むのはやはり流石だ。


 そして案の定、二番の人も三番の人も、似たような構文での自己紹介を続けて。出席番号十八番、葵の番がやってくる。


「白坂葵です。中学まではバスケやってました。高校では今のところ部活入るつもりはないです。よろしくお願いします」


 おお、アイツ簡素の中でも本当に簡素に済ませやがったな。


 にしても高校では部活するつもりなかったのか。バスケの半ズボン越しのアイツのお尻はシルエットが若干隠れながらもその中に確かな丸みがあって中々良かっ……ん゛んっ。


 まずい、この尻フェチが原因でつい昨日フラれたことを忘れたのか俺は。いや、だからと言ってあの魅力的なお尻をもう二度と見ないなんてこと、できるはずがないんだけどさ。


 俺にとってのお尻は、男子高校生にとってのおっぱいと大差ない。むしろそれ以上の存在だ。特にそれが葵のものとなれば簡単に視線は吸い寄せられ、つい見入ってしまう。


「……けっ」


「っ!?」


 あれ? というか今、アイツチラッとこっち見た? 見るだけ見て舌打ちするみたいにした?


 まずい。スカート越しのお尻を見ていたのがバレたか。今日は昨日のことを謝るつもりでいるのに、そんなのがバレたのなら謝りづら過ぎる。


 実際に気づかれたのかは分からない。が、葵が向けてきた視線はまるで俺を突き刺すように鋭くて。




 俺には、その恐怖を椅子に座って柔らかく変形したお尻を眺めることで中和することしかできなかった。

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