第3話 正人さん・・・


車の往来が多いホテル横の道、皆結構スピードを出して走っている。

正人さんは私を車とは逆側に歩かせてくれた。


「危ないから気を付けないとね。」


正人さんはそういうところも優しい。私はこの人で良かったと心底思った。



横断歩道で信号が変わるのを二人並んで待った。

一台の車が信号が変わる前にとスピードを出して右折しようとした。

前から走って来たバイクも信号が変わる前にとスピードを出して直進してきた。

そして車とバイクが接触した。

バイクに乗っていた男性は放り出され、転倒したバイクが勢いよくこちらに滑ってきた。


「朋美危ない!!」


「キャー イヤァー」


正人さんにバイクがぶつかった。

私は正人さんが突き飛ばしてくれた。

傘が空を舞うのがなぜかゆっくり見えた・・・


「正人さん、正人さん・・・」


いくら叫んでも返事はなかった。

音がすごかったので野次馬が集まった。その中の一人が、救急車を呼んでくれたみたいだ。

正人さんが救急車に乗せられ、私も同乗した。


病院に着き、正人さんは緊急手術を受けた。


・・・でも、間に合わなかった。



正人さんは亡くなった。



医師が私になにやら説明をしていたが、ほとんど聞こえなかった。徐々に意識が遠くなり、私はそこで倒れた。

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