第2話 記念写真


婚姻届けは私の誕生日4月15日に提出すると達さんが決めてくれた。


結婚式はしないことに二人で決めたが、写真だけは記念だから撮ろうと彼が言ってくれたので、日曜日に二人でホテルの写真館にやってきた。


彼は事前に予約をしてくれていた。

髪を整え、化粧をして、私はウエディングドレスを着た。彼はシルバーグレーのタキシードだった。

彼が折角だから着物でも撮ったらと言ってくれていたので、私だけ着物も着た。

私はうれしかった。

成人式でも着物を着なかったので初めてだった。

そして着物の絹の重みが結婚の重みと重なりうれしさが倍増した。


私にとって夢のような時間だった。彼に心から感謝をした。



撮影が終わり、二人でレストランに行った。


「達さん、本当にありがとう。ウエディングドレスだけでなく着物も着せていただいて、本当にうれしい。」


「だって披露宴もしないからこれくらいいいじゃないか。朋美どっちも似合っていたよ。綺麗だった。写真出来上がるのが楽しみだね。それと、僕のことこれからは正人って呼んで。君ももうすぐ達になるんだからね。」


「はい。わかりました。正人・・・さん。」


「フフッ、あとね、もうひとつプレゼントがある。これ。」


正人さんは新婚旅行のパンフレットを私に差し出した。


「なかなか二人一緒に長期の休みはとれないから、特別休暇で新婚旅行は行こう。朋美、海外は行ったことないよね。ハワイに行こうよ、マウイ島とオアフ島。」


「いいの? うれしい。有難う。」


私は正人さんからの愛を感じた。人からこのように想いを寄せられたことがなかったので、とにかく幸せだった。



初めて食べたフランス料理のフルコース。緊張もしたけどそれ以上に正人さんの笑顔で私は満腹になった。



食事が終わりホテルを後にした。


外は雨が降っていた。

念のため持って来た私の傘で初めて相合傘をして駅に向かった。彼が傘をさしてくれた。



何もかもが初めてで楽しくて幸せな1日・・・



そうなるはずだった・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る