刀と剣士と声と

・女剣士「師匠~なんで『真の武器は持ち主を選ぶ』って言葉があるんです?」


・師匠「そりゃあ簡単よ。武器もまた“意志”を持っているのさ」


キセルをくゆらせながら師匠である初老の男性は弟子である女剣士にそう語る。

しかし、女剣士はピンと来ないらしく、それに質問を重ねた。


・女剣士「でも師匠。剣とか武器は喋らないじゃないですか?」


・師匠「当り前だ。“本来”なら“声”は聞こえないんだよ」


・女剣士「????????」


師匠の言っていることがよくわからず、?マークを浮かべる弟子。

そんな弟子に呆れながらも師匠は話を続けた。


・師匠「いいか。剣とってのは担い手の心を映す鏡だ。これはわかるな?」


・女剣士「うん、精神が弱い状態だと切れ味が鈍るとかそういうヤツだよね」


・師匠「そうだ。本質的には同じなんだよ。それを武器自体が発していると思え」


・女剣士「それが“声”で“意志”?」


・師匠「武器の“声”が聞こえれば武器もそれに応え、持ち主に対して最大限の答えを持ってきてくれるのさ。

剣に限らず、どんなナマクラだろうと“声”を聞けば必ずソイツは応えてくれる!!」


そういうと師匠は立ち上がり、縁側から庭へと移動する。

そして岩の前に立つと静かに目を閉じた。

しばしの沈黙の後、一枚の葉っぱが宙を舞い、ゆったりと岩の方へと落ちていく。

同時に師匠は目を見開くと一瞬にして刀を抜き放つ。

刹那の一閃―――――

音を立てながら岩は真っ二つに両断される。

しかし、岩の上に乗っていた小さな葉っぱは傷一つなく、切っ先の下へとそのまま落ちていった。


・女剣士「――――――!!」


・師匠「こんなものは序の口だ。真に極みへと至れば、“如何なるものも斬れ、如何なるものも斬らない”様になれる。

剣を武器の声が聞こえ、そして共に極まれば・・・この世に断ち斬れるものは無くなる」


・女剣士「如何なるものも、斬れる」


・師匠「ま、今のおまえじゃまだまだ無理そうだがな」


にまっと嫌味ったらしい笑みを浮かべた師匠に女剣士はムッと顔を歪める。


・女剣士「フン、すぐにでも極みへと至って師匠の腰を抜かしてやるわよ!!」


・師匠「ハッハー!やれるもんならやってみい!!」


・女剣士「言ったなクソジジイ師匠!!!」


・師匠(道を見出すのは難しい。だがそれを見つければ後は己の腕次第よ。焦らず武器の声を聴いて、強くなれよ)


弟子との他愛ないやり取りをしながらも武器を持つものとしての在り方と己の在り方を教えていく。

いずれそれが開花し、彼女の力になることを願って

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