継承―受け継がれる希望―

「無様だな。“半身”を始めとした多くを失った結果がその姿か―――」

「失ったものは大きく多かったけども、それでも得るものはあったさ」

「―――それが“アレ”か・・・・・」


黒騎士は視線を剣士の後ろにいる双剣の少年に移す。

正確には彼の左手に持つレイブレードに―――――

少年は双剣を構え、いつでも踏み込める姿勢で黒騎士を睨む。

黒騎士はそんな少年の視線を無視して剣士に語り掛ける。


「まだ“開花”はしていない様だがな」

「確かに今はまだ萌芽であり、新芽でもあるけども―――目覚めはそう遠くないよ」


剣士はそう言いながら生身の片腕で大剣を構える。

黒騎士は微動だにしておらず、仮面を被っているが故にその表情は読み取れないが

その溢れ出ている感情を読み取ることはできた。

黒騎士から溢れている感情は憎しみだけではなく哀しみを伴った“怒り”の色である。


「――――そいつがそうだと?」


黒騎士の怒りの感情が籠った声が男に突き刺す。

片方が義腕の剣士は自身の機械仕掛けの腕に視線を移すがすぐにそれに応える様に黙って頷いた。

黒騎士は兜の下の口を激しく憎悪の色で歪ませ、彼らを睨む。

しばしの沈黙、しばしの静寂。

されども相対を続ける両者。

しかし、両者の静かな戦いは続いていた。

剣士の後ろに双剣を構える少年も二人から目を離すことはせず、ただ息を吞む。

そしてその沈黙は黒騎士から終焉を迎えさせるのであった。


「―――――いいだろう・・・貴様がそこまで言うのだ。それだけの価値があるとみる。ならばこの先も抗えばいい。結末はなんであれ。その先に答えを見出しているのならな」

「――――」


黙って黒騎士を見やる剣士。

それを見た黒騎士はこれ以上は無意味かと察した様に踵を返し、言葉なくその場を立ち去っていく。

そしてそれを剣士は失った腕の代わりの義腕を触りながら黙ってその姿を見送るのであった。

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